<ヤクルト7-9横浜>◇15日◇神宮

 勢いが止まらない。横浜ターメル・スレッジ外野手(34)が5回、3試合連続となる5号2ラン。13日中日戦で1試合3本塁打放ってから絶好調の助っ人のひと振りが、8回の代打金城の逆転3ランを呼び込み、チームも連勝を飾った。この勝利で07年8月14日以来、4季ぶりの貯金2。移籍2年目の男のバットが、最高のスタートダッシュの原動力となっている。

 また打った。高々と上がった打球が右翼ポール際に吸い込まれるのを確認しながら、スレッジはゆっくりと一塁ベースへ走り始めた。同点で迎えた5回1死二塁。ヤクルト館山のチェンジアップを振り抜いた。「思ったより打球が伸びていってくれたね」と笑顔で振り返った助っ人は、この1発で早くも今季5号。開幕4戦目での5本塁打は、78年ギャレット(広島)、89年ブーマー(オリックス)と並ぶ日本最速タイ。報道陣からこの記録を聞くと「シンジラレナイ!」と日本語で喜んだ。

 日本ハムからの移籍1年目となった昨季は、セの投手陣に苦しんだ。自己最多の28本塁打を放ちながらも、「パ・リーグの投手は直球系が多いけど、セ・リーグは変化球が多い。それに対応することが出来なかった」と、満足していなかった。そのため今季は、これまで自分がどんな配球で攻められていたかを研究。5回の打席もプランを持って立った。本塁打を放つ1球前は外角へのチェンジアップを空振り。「同じ球が来たら、しっかり振り切ってやろう」と意識を持ち、甘く入ってきた狙い球を、しっかり引き付けて振り抜いた。ヤクルトの捕手相川は「去年とすごく変わったわけではないけど、甘い球をしっかりとらえている」と振り返った。

 飛ばないと言われる統一球での本塁打量産。杉村巡回打撃コーチは「スレッジはバットに乗せてボールを運ぶ。バット軌道の線に乗せて押し込むことができる」とその打撃を説明した。低反発球をはじいて飛ばすのではなく、バットに出来るだけ長く接触させる。しっかり飛ばすことができるスイングに、投手を研究する飽くなき姿勢。この2つがうまく重なったことが、絶好調につながっている。

 「今はボールが大きく見えるんだよ」。打撃の神様川上哲治氏は「球が止まって見える」と言ったが、そう感じさせるほど、コンディションはいい。節目の通算100号まで残り24本。このペースでいけば、達成は間違いない。試合終了後、ファンから「ホームランキング!」と声をかけられると、手を振りながら「アリガトウ!」と答えたスレッジ。この勢いでいけば、そのタイトルも見えてくる。【佐竹実】