<ヤクルト4-0巨人>◇28日◇静岡

 一足早いけど、セ界には「ツバメの季節」が到来した。小川ヤクルトが巨人に同一カード3連勝し、9連勝。館山昌平投手(30)が2安打無四球で、2試合連続完封と強力打線を封じ込めた。月間5完封はチーム17年ぶり。打線も先制、中押し、ダメ押しと盤石の試合運びと、投打の歯車がガッチリかみ合った。

 初の2ケタ奪三振での完封は、長く苦しんできた小笠原から奪った。9回2死二塁、ヤクルト館山は、激しく空を切ったバットを見ながら、静かに拳を握りしめた。10奪三振で2試合連続完封。わずか2安打に抑え、9連勝で首位を守った。

 2年の時を経て、立場は変わった。09年に17打数10安打4本塁打と打ち込まれた天敵を、完璧に封じた。1回1死二塁のピンチを146キロの直球で見逃し三振に切ると、さらに集中力を研ぎ澄ませた。空振り、空振り、空振りで、4打席連続三振に打ち取った。

 昨年は対戦がなかった。「全部が全部打たれていたわけではないし、去年は対戦がなかった。2年たてば体も変わる」と言う。21日の中日戦では封印したチェンジアップも解禁。最速149キロの直球にスライダー、カーブ、カットボール、フォーク、シュート、チェンジアップと多彩な変化球を交えた。荒木チーフ兼投手コーチは「小笠原の状態が悪いのと、館山が完璧だった。あれだけすべての球種を投げ分けると、結果もついてくる」と絶賛した。

 静岡でも信じたルーティンは欠かさない。登板前には、毎回必ず50メートルのタイムを測る。昨年オフから肉体改造に取り組み、体重を約5~6キロ増やして98キロ前後とした。タイムは、肉体の状態をチェックする指針。神宮では球場の芝生を走るが、静岡・草薙球場では隣接する陸上トラックを走った。陸上スパイクを履く念の入れようで、通常の6秒3~4から、6秒08をマーク。心身ともに充実の時を迎えている。

 お立ち台では、静岡のファンに「新幹線で近いので、神宮にも足を運んで下さい」と笑顔で呼び掛けた。投球内容については相川のリードのおかげと繰り返す。試合時間は2時間37分。27個のアウトにぎっしりと力を詰め込んだ。【前田祐輔】