<阪神1-4ロッテ>◇26日◇甲子園

 えっ、あれ、まさか…。阪神マット・マートン外野手(29)がボーンヘッドを犯した。8回表1死二塁で飛球をキャッチし、そのままスタンドへボールを投げ入れた。アウトカウントを間違った大チョンボ。二塁走者のロッテ今江を生還させ、致命的な4点目を献上してしまった。03年の巨人レイサム以来の珍プレー。レイサムは味方に助けられて笑い話で終わったが、貧打にあえぐ虎にはね返す力はない。連敗で借金は7にまで膨らんだ。

 甲子園はその瞬間、静かになった。雨音が響き渡る。誰もが目を疑うシーンは2点を追う8回表1死二塁。ロッテ清田が右翼定位置右よりやや後方に飛球を放つ。マートンはなぜか、ゆっくりと落下地点へ。当然、二塁走者今江はタッチアップで三塁に走りだした。

 マートンはそのまま右翼線方向に小走り。一塁アルプス席のファンに向け、下手でボールを投げ入れた。あれっ、2アウトだったっけ?

 あっけにとられた観客が一瞬、静まりかえる中、審判にうながされた今江が戸惑いながらホームイン。罵声も起きなかった。ため息だらけのどよめきだけが残った。

 マートン

 今までの野球人生の中で、1度も経験がないこと。絶対に起こすべきではないことだった。第三者として見たことはあった。その時はなぜあんなことを、と思っていたのに…。打者を見てカウントを見て風を見て、誰がランナーなのか、ボールがどこに飛んで、それに対してどうするのか。あの時はどういうわけか、基本的なアウトカウントが抜けてしまった。言い訳も何もできない。

 ミスに気づいた瞬間、思わず右手で頭を押さえた。信じられない、といった表情で帽子を取った。タッチアップによる三塁進塁と失策による失点。あまりに痛すぎる4点目を献上し、チームは3点ビハインドのまま負けた。打ってはマルチ安打。6回には右前適時打を放っていたが…。事の重大さは、本人が最も痛感していた。試合後は逃げることなく自分を責めた。

 マートン

 チームに対してもファンに対しても、大きなミスをしてしまって本当に謝りたい。もしあの1点がなければ、同点にするチャンスがあった。ボールカウントは考えていたのに…。過ちは起こるものだけど、あれに関しては起こるべきではないものだった。

 6回の1得点で流れを呼びかけながら、まさかのミスが連敗を導いてしまった。「ああいうのは論外やな」。真弓監督も苦々しく言葉を吐き出すしかない。後味の悪い1敗で今季ワーストの借金7。もう、後には戻れない。はい上がるしかない。「やることをやっていかな、しゃあないやろ」。指揮官は会見の最後、語気を強めた。【佐井陽介】