<横浜0-9オリックス>◇14日◇横浜

 そら、会心のトレードよ。オリックス寺原隼人投手(27)がオフの交換トレード相手だった横浜山本と初めて実現した異例の“直接対決”に圧勝した。古巣に8回無失点でチーム最多6勝目。一方の山本は6回途中5失点で両リーグ最多8敗目と明暗くっきり。チームは横浜戦13連勝で、今日15日も勝てば2カ月ぶりの借金完済だ。

 1年前の主戦マウンドで寺原が古巣を牛耳り、6勝目を挙げた。トレードされた先発投手同士による珍しいガチンコ対決。「全然それは意識しなかったし、負けたくないってのが強かった。勝つことしか考えなかった」。交流戦4戦4勝で笑顔を振りまいた。6連敗でタオルを頭から被る山本とは対照的だった。

 得点圏に走者を置いたのは3度だけ。冷静にゼロ行進を進めた。先にマウンドを降りたのは山本だった。6回1死二、三塁、なんと打席に寺原の場面で横浜ベンチが見切りを付けた。これには寺原も「オレッ!?」と目を開いてびっくりだ。

 「もしかしたらスクイズを警戒したのかも。それ以外にないです。僕、全然山本さんに(タイミングが)合ってませんでした。そのおかげの大量得点ですし、あざっす!」。

 自分が遊ゴロに倒れた直後、打線は3連打。結局、この回5得点でリードは7点に広がった。結果がすべての世界。昨年12月の入団会見で「ボク、3年間最下位チームにいたので…」と勝ちに飢えていた男にとって、今はオリックスの勝利が素直にうれしい。古巣への皮肉や同情はなかった。

 横浜には08年から13連勝。しかもお得意さまから獲得した寺原が、古巣に連勝だから球団としてもトレードに勝利したと言えそう。09年2勝、10年4勝と直近2年分の勝利を6月で稼いだ。岡田監督は「寺原は点差あったから、8回でな。もう完封と一緒よ」と“完封査定”でべた褒め。寺原の場面での投手交代には「おお、びっくりしたわ。しかも、すぐ1球で代わったからな」とニヤっとした。

 8回無失点で、寺原の連続適時打なしは31イニングに伸びた。頼れる右腕で3位をキープして、借金はついに1。「明日ひとつやって、また空く。投手、どんどんつぎ込めるな」と岡田監督。2カ月間に及んだ借金生活にピリオドを打つ時がようやく、来た。【押谷謙爾】