<中日5-2横浜>◇8日◇ナゴヤドーム

 5連敗中だった中日チェン・ウェイン投手(25)が7回1/3を2失点で5月26日以来、43日ぶりとなる今季3勝目を挙げた。中盤まで1点を争う展開でも自分を見失わず、7回まで横浜打線を1安打に抑える好投。待望の打線の援護を呼び込んだ。首位ヤクルトとの差を半歩縮め、追撃態勢に入った。

 チェンが久しぶりに笑った。試合終了の瞬間、1カ月以上の苦悩から解放されたように表情を崩した。

 「久しぶりですね。うれしい。野手の方が打ってくれて感謝しています」。

 打線への御礼も忘れず3勝目をかみしめた。無援の日々がようやく終わった。6月1日ソフトバンク戦から自己ワーストの5連敗。試合をつくれなかったのは1度だけだったが、チェンがマウンドにいた35回1/3イニングで味方の得点はわずか2点だけ。主砲和田が「いつもチェンを見殺しにして…」と“ざんげ”するほどだった。

 この日も横浜清水に対し、2回小池の適時打による1点のみで試合が進んだ。5回2死満塁では4番和田が凡退した。またか…。孤立無援という嫌な空気が流れ始めていた。

 だが、チェンは己を見失わなかった。快速球で右打者の内角を攻めるスタイルを貫き4回まで完全に抑えた。5回1死からスレッジに初安打となる二塁打を浴びた後も、中村を内角直球で三ゴロに打ち取って無失点。いつもと同じように淡々とスコアボードに「0」を並べていった。

 そんな左腕の姿に、打線もついに呪縛を打ち破った。6回1死から小池が出塁するとベンチが動いた。井端の初球にヒット・エンド・ランを敢行し、相手の野選を誘った。相手失策にも乗じて、小山の適時打など3点を奪い、ようやくチェンを援護した。

 一緒にお立ち台に上がった小池がわびたほどの“無援地獄”を、チェンは真顔で振り返った。

 「正直、考えていませんでした。大事なところで本塁打を打たれたり、終盤に点を取られたり、自分の状態が悪かった。いつも1点取られたら負けだという気持ちで投げていましたから。まだ状態は70~80%くらい。もっとできる」。

 敗北を他人のせいにすることなく、自分を省みた。調整に遠投を取り入れるなどフォーム修正を図った。その道はまだ半ばだというから頼もしい。名古屋の梅雨明けと同時にチェンもトンネルを抜けた。

 「暑さは関係ない。台湾の方が暑いですから」。猛暑の夏でも食欲が落ちず、調子が上がっていく。ツバメ軍団追撃へ向けて、快速左腕がいよいよエンジン全開だ。【鈴木忠平】