<阪神5-9横浜>◇30日◇甲子園

 二塁塁上。花束を手に何度もおじぎをし、横浜ベンチにも頭を下げた。1500の安打は多くの人に支えられて積み重ねてきた。謙虚な新井貴浩内野手(34)らしい姿を、夫人と息子2人も呼んだ甲子園のど真ん中で見せた。

 「節目ということで、お世話になった方々や応援してくれているファンの皆さんに感謝したいです。ファンのためにもこれからどんどん打っていきたい」

 残り1本で迎えた2回の第1打席。横浜須田の変化球を引っ張り、三塁線を痛烈に破った。

 「1500ですか。当初の僕を知っている人にとっては感慨深いでしょうね…」。ドラフト6位で広島に入団。レベルの差にがくぜんとした。「入団時には打てると思わなかった」。駒大の先輩でもある当時の大下剛史ヘッドコーチは「プロではとても無理」と思ったという。当時を知る広島関係者は「新井の試合前のノックを見て、相手も客も笑っていた。名物のようになっていた」と振り返る。

 それでも、新井には猛練習や逆境に耐える強い体と精神力があった。血を吐くような努力の末に、広島で、阪神で4番の地位をつかみ取り、プロ13年目で節目に到達した。まだ34歳。大きな故障も抱えてない。2000本の大台も十分に目指せる好ペースだ。

 4回には先頭で四球を選び、ブラゼルの逆転2ランを呼び込んだが、結局は大敗した。記念の1日を勝利で飾れなかった。「通過点ですから」と何度も繰り返してきた新井。今はまだ前を見てがむしゃらに突っ走る時期だ。【柏原誠】