<広島2-5巨人>◇6日◇マツダスタジアム

 8月6日の広島平和記念日に、1958年以来、53年ぶりに広島市でプロ野球公式戦が開催された。同日が「休場日」という広島市の条例が改正されて実現。この日は元監督の古葉竹識さん(75)らも訪れ歴史的試合を見守った。鳴り物応援は自粛となり、試合前には黙とうや被爆したピアノでの演奏などセレモニーも行われた。

 53年ぶりの歴史的試合には、3万1341人の観客が詰めかけた。原爆が投下された広島にとっては特別な「8月6日」の広島平和記念日に、広島で58年の巨人とのダブルヘッダー以来のプロ野球公式戦が開催された。くしくも、対戦相手は58年と同じ巨人だった。

 試合前には全員で黙とうし、被爆ピアノによるレクイエムの演奏などセレモニーが行われた。試合には敗れたが、鳴り物応援も自粛し、広島選手が打席に入るときにかかる音楽もない、厳粛な雰囲気に包まれた一戦となった。

 これまで広島市の条例で「休場日」と定められていたことから、旧市民球場では試合が行われていなかった。しかし、09年に新球場マツダスタジアムが完成し、昨年、条例が改正されて試合開催が可能になった。

 58年の試合に選手として出場したという元監督の古葉さんもこの日、球場でセレモニーを見守った。古葉さんは「試合のときは(8月6日を)当然意識した。監督で初優勝してパレードをしたとき、原爆で亡くなった家族の遺影を掲げたファンの方に『応援してたよ』と声をかけてもらい、泣きながらお礼を言ったこともある」と振り返った。53年ぶりに試合が開催されることには「(広島の)みなさんにやってもいいぞ、と許していただいたということでしょう」と受け止めた。

 OBの衣笠祥雄氏(64)は「広島にとっては特別な日だし、僕らのときは遠慮すべきという時代。戸惑っているのは事実。(球場の)場所も変わったし、時の流れを感じる」と話した。

 長崎県出身の今村は、最近、グラブに「長崎-廣島」と刺しゅうを入れた。「思いつきで入れただけです」と話したが、長崎に原爆が落とされた8月9日は毎年登校日で、黙とうをささげた。広島でもその気持ちを忘れていない。選手会長の石原は「忘れてはいけない日。少しでも勇気づけられるように野球を通じて何かを与えられたら」と話し、野村監督も「野球ができる幸せを感じながら選手はプレーしただろう。僕もそうだった」としみじみと語った。【高垣誠】