<楽天2-1日本ハム>◇11日◇Kスタ宮城

 4番が一振りでひっくり返した。楽天山崎武司内野手(42)が8回2死一塁、右翼ポール際に11号2ランを放ち、逆転勝ちした。日本ハムの先発ダルビッシュが7回無失点で降板直後、ワンチャンスを仕留めた。3月11日に発生した東日本大震災から、ちょうど半年の節目。大入りのKスタ宮城にでっかい虹を架けた。オリックスが敗れ、3位に再浮上した。

 ピンと背筋を伸ばしてから、ぐにゃりと手足を折り曲げた。静から動の反動を利し、山崎は強い外角直球を射抜いた。8回2死一塁。1点差負けの瀬戸際で、初球が勝負だった。「100%の力で、自分のスイングをしよう。それだけだった」。素手の右手を放り出しつつ、最後にひと押しを加えた。左腕1本、独特のフォロースルーは、ボールをつかまえた証し。「久々に、カチッとはまった感じ」と感触はあった。

 右翼ポールに向かって、ゆるやかな放物線がかかった。失速せず真上からスタンドに落とした。自身の本塁打についてめったに感情を出さない42歳。ぎこちない、武骨なガッツポーズがファンに向かって自然と出た。総出のベンチは目も口も大きく開け出迎え。お立ち台で「ホームランなんて全然狙ってなかった。ま~た三振かぁ、って思った人、1人や2人、いたでしょ」と独演会に入ったが、ベンチに戻った本人も、打った直後は放心状態で到達点を見つめていた。

 100%の力で振ったからこそ、スタンドインした。仙台のファンを驚かせてきたパワーが戻ったのは、この日が9月11日だったことと無縁でなかった。前日の第4打席。日本ハム斎藤に二ゴロ併殺とされた打席が「ずっとモヤモヤとしてあった」。調子自体は決して上向きといえない。当てにいった自分が腹立たしかった。「調子いいとか悪いとか悩んでいるオレは、何てちっぽけなんだとつくづく思った。亡くなった方々の思いを一生持ち続けなくてはいけない。試合の前に黙とうをして改めて思った」。震災から半年の節目。気を新たにし、突き詰めてきたスタイルを体現した通算402号だった。

 2年契約の最終年。「オレは受け身の立場だし、何も言えない。でも、できる限り。あと2年はプレーしたい」と言う。1カ月強離脱しても本塁打、打点がチームトップ。球団創設から攻撃の屋台骨を支え続けている。千両役者に代わりはきかない。44歳シーズンを迎える来季も、楽天で思い切りバットを振っている可能性が高い。「シーズンが終わったら直接、被災地を回ったりしないといかんねぇ」。気は優しくて力持ちを、まだまだ通す。【宮下敬至】