<オリックス6-8楽天>◇14日◇ほっともっと神戸

 楽天牧田明久外野手(29)が、3安打4打点の活躍で大事な3位攻防戦の勝利に大きく貢献した。1回2死満塁で右翼手が打球を見失う幸運な先制2点適時二塁打に続き、3回には今季1号2ランを左翼席へ。5回にも中前打を放ち、三塁打が出ればサイクル安打達成という大暴れを演じた。シーズン後半に調子を上げた昨年を思わせる好調ぶりで、大事な終盤に向けてそのバットが頼もしさを増してきた。

 星野監督のイチ押し君がついにやった。「左ピッチャーを打てなくては、僕はいる意味がない」。牧田は自分の役どころを重々承知していた。3位を争うオリックスには6連敗中で、しかも相手先発は、先週自分がノーヒッターを阻止した左腕中山。もうやるしかなかった。

 「最初の1本ですうっと気が楽になりました。ホント、ラッキーでした。あれは見えないんですよ」。1回2死から安打と四球で満塁。いきなり好機だった。ふわっとライトへ上がると、神戸の薄暮が打球を見失わせてくれた。先制2点適時二塁打だ。3回の第2打席はスライダーを思いっきり引っ張り込んだ。「手ごたえ良かったっす。もう9月、遅いですけどね」と、今季初めてスタンドへ放り込んだ感触にちょっとだけ酔った。5回は中前打でサイクルにリーチ。「全然、知らなかった。う~ん、惜しいっていうか、いいピッチャーですからね」。8回先頭で迎えた第4打席は、オリックス平野の剛球をはじき返した右飛だった。

 キャンプで星野監督の目に留まった。「いいパワーしとる。アイツ、誰や」。昨季終盤にようやくスタメンが増えた11年目を見逃さなかった。

 田中のフリー打撃登板で大きな柵越えを放つと「オレの予言は当たる。言った通りだろ」ときた。新しいチームの核を担う資質があるとジャッジされた。そんな上げ潮の直後に右肩痛を発症した。かばってひじも痛めるという悪循環で大きく遠回りした。「何やってるんですかねぇ僕は…」。福井出身。控えめを通してきた男がくじける寸前だった。

 2月、新任監督にもらった言葉が忘れられなかった。「今年活躍できなかったら、お前、分かってるな」。重圧ではなく期待してもらってると受け取った。痛みをこらえ保存治療を選択。飛距離も強肩も、コツコツと取り戻してここまできた。「こういう緊迫した勝負で、試合に使ってもらっているのは幸せ」と牧田。Aクラスへのしのぎ合いはまだまだ続く。恩返しする時間は、幸いにもたっぷりある。【宮下敬至】