阪急、近鉄などで監督を務めた西本幸雄氏(享年91)が25日に心不全のため死去したことを受け、川上哲治氏(91=日刊スポーツ評論家)が27日、同氏の死を悼んだ。巨人の監督として日本シリーズで5度の対決を繰り広げたライバルとの熱戦を「私の球史の中でちゃんと生きている」と懐かしんだ。

 西本さんの訃報を聞いた時には、本当に残念に思った。数年前にゴルフのエージシュートを達成したと聞いて、私よりも元気だなって思っていたから。会う機会があれば「どっちが先まで生きるかね。あんたも元気ですな」と、そんな話になったんじゃないかと思っていた。

 西本さんの名前を聞いて思い出すのは、やっぱり日本シリーズでの5度の対戦だ。中でも71年のシリーズは阪急が絶対に有利と言われていて、我々も、どうやったら勝てるかと考えていた。福本の足を封じるため、投手に一塁けん制をわざと暴投させて、バックアップの右翼手に二塁で刺させるという作戦まで用意していた。それが第3戦に王のサヨナラ3ランが出て、一気に流れが変わった。こっちから見ていたら、がっくりと気落ちしたのが分かったし、張り詰めていたものが抜けていく感じが見えた。とても印象深い場面だった。

 勝負はおもしろい。片一方ばかりプラスになることもあるんだから。実力は互角だったと思う。西本さんのチームは、野球選手らしい考え方を持ち、技術もあって強かった。「絶対勝たないかん」と思っていたはず。我々の方が、わずかに運に恵まれたのはあるけど、悲運の監督だとか言わない方がいい。かわいそうだ。

 メンバー表を交換する時も、倒さなければいけないという気持ちがギラギラ当たった。ユニホームを着てる時はあまり話をしなかったけど、私にもお迎えが来たら今度はいろんな話がしてみたい。阪急との戦いは私の球史の中でちゃんと生きていますから。向こうではゴルフでもして楽しくやろうと思います(談)。