和田監督、ファンの皆さん、もうハラハラさせませんよ。昨季、スローイング難に悩まされた阪神新井貴浩内野手(34)が18日、改良した「新フォーム」を初披露した。兵庫・西宮市の鳴尾浜球場を今年初めて訪れ、昨年とは違うスムーズな投法でキャッチボール。「レギュラー陣の守備」を課題に掲げた和田監督もこれを見れば一安心?

 あれは誰だ?

 新井さん?

 右翼フェンス際でキャッチボールを始めた新井のフォームは昨年とは別人のように変わっていた。徹底して取り組んできたスローイング矯正。その「新フォーム」を初披露した。

 「上から?

 そういう感じかな。別に意識はしていないよ。自然とね」

 最も変わったのは右腕の軌道だ。肘を高く上げ、上から振り下ろす。動きはスムーズで、グラブをはめた左手の使い方も柔らかい。昨年は首元から手首を押し出すようなフォームだった。素早く投げられる半面、安定感を欠いた。さらに右肩に痛みや引っかかりが生じ、またフォームを崩すという悪循環だった。

 「昨年はチームに迷惑をかけたから」と新井は反省する。オフに入ってすぐ、伊藤健治トレーナーの指導の下、投手が行うような棒を使っての運動などで両肩の可動域を広げ、柔らかさを出すトレーニングに精を出してきた。

 会話中やウエートトレの合間にもスローイングの動作を行い、クセのようになっていた。その様子を見た金本から「ゴールデングラブ賞をとる妄想でもしとるんか?」とちゃかされたほど。努力のかいあって、今では強く意識せずとも頭に描いたフォームで動けるようになった。

 1月中に鳴尾浜のグラウンドに足を踏み入れること自体が異例。「伊藤に来いって言われたので」と冗談めかしたが、もちろん屋外で状態を確かめるためだ。最長40メートルで72球。全力ではなかったが、ボールは横にそれることなく伊藤トレーナーの正面に収まった。今年初めに「成果を感じている」と口にしていたが、この日のスローイングを見る限り、確かに安定感が増している。

 和田監督の思いに応える進歩といえる。前日17日、85年の優勝と87年の最下位を味わったメンバーが集う「天地会」で指揮官はこう言っていた。「(85年は)レギュラーの守りが本当にうまかったという思いがある。それが今季の私の課題でもある」-。

 新井が安定して守れれば、昨年のように終盤に守備固めを送る必要がなくなり、攻撃力を維持したままフルイニング戦える。チーム全体にとっても大きなメリットになる。

 もちろん、今のフォームを実戦の中で使えなければ意味がない。「これを継続して痛みが出ないようにじっくりトレーニングしていきたい」。昨季リーグ最多の18失策。虎党をヒヤヒヤさせてきたホットコーナーが、今季は文字通り熱くなる。【柏原誠】

 ◆新井の守備苦闘メモ

 昨年8月26日のヤクルト戦(甲子園)で8回に悪送球を犯すと9回の守備からベンチに退き、08年から続いていたフルイニング出場が386試合で途切れた。これがシーズン13個目の失策。送球に安定感がなくなり、右肩痛が悪化した時期だった。同28日のヤクルト戦では終盤に4年ぶりに一塁を守り、そこから三塁→一塁の守備固めパターンが確立。また一塁で7試合に先発した。シーズン失策数は巨人坂本と並ぶリーグ最多18。三塁は広島時代から守り、06年から完全固定。阪神移籍初年度の08年に一塁に戻ったが、09年から不動の三塁だった。ちなみに一塁では08年にゴールデングラブ賞を受賞している。