ソフトバンク山田大樹投手(23)がP砲をねじ伏せた。9日、フリー打撃に初登板。ウィリー・モー・ペーニャ外野手(30=マリナーズ)に24球を投げ、場外弾で沸かせてきたメジャー84発男を柵越えゼロ、安打性5本に抑え、バットもへし折った。ムービングファストボールを絶賛された6年目左腕がローテ入りに前進だ。

 本日のショータイムを休演にした。宮崎キャンプのフリー打撃。ソフト名物となっていたペーニャの「本塁打ショー」を初登板の山田が封じた。

 24球の対戦で安打性はわずか5本。「どの辺りを打つのかなと思って試して投げました。すごいですね、パワー」。右翼フェンス直撃が1本あったが、キャンプ初日にバックスクリーン直撃の150メートル弾を放った怪力男に、最後まで柵越えを許さなかった。期待外れとなった観客のため息が心地よかった。

 顔つきは格闘家チェ・ホンマン似でも、力任せの投球スタイルではない。内野ゴロ5本にファウル5本。「僕は抑えるタイプではなく、内野ゴロを打たせてとるタイプ。そこは勘違いしないようにしたい」と持ち味を出し切った。この日はすべて直球勝負。10球目にはバットをグリップ部分からへし折ってみせた。

 対戦後は打撃ケージ脇でペーニャとがっちり握手した。「いいムービングボールだねと言われたので、あなたのパワーはクレージーと返しました」。山田の直球はナチュラルに変化するムービングファストボール。不規則な回転で打者の手元で微妙に変化し、メジャーでは主流。その本場で84発を打った大砲はバットの芯を外され、「いい球だった。真っすぐが内にも外にも動いた。今年は成績を残すんじゃないかな」と若き左腕を持ち上げた。

 キャンプ初日に、審判団から右足の上げ下ろしに2段モーションの疑いがあると指摘された。高山投手コーチは「かわいそうなところはある。それは言っても仕方ないので1球ずつ確認してやる」と修正中だ。山田は「フォームを確認しながら焦らずやる」と不安材料とは感じていない。

 昨季は先発6番手を争いながら7勝。日本シリーズでは育成出身で初となる勝利投手となった。キャプテン小久保への年賀状には「軸になります」としたためた。杉内、和田、ホールトンが抜けた先発陣。入団6年目左腕が、ローテ入りにまた1歩前進した。【押谷謙爾】