<練習試合:日本ハム9-7DeNA>◇16日◇名護

 期待の主砲に、待望の1発が飛び出した。日本ハム中田翔内野手(22)が16日、DeNAとの練習試合で、バックスクリーン左へ今キャンプ初本塁打となる3ランを放った。紅白戦から21打席目でのアーチで、吹っ切れたように3安打4打点の固め打ち。試合も大量ビハインドから逆転勝ちした。栗山英樹監督(50)は「ザ・4番という感じ」と主軸としての働きを大絶賛した。

 新生栗山ハムの鍵を握る若き4番候補・中田が、強烈な一撃で新球団DeNAを沈黙させた。4点を追う5回1死一、二塁。1ボール2ストライクと追い込まれながら、外角チェンジアップにフルスイング。「風が強かったし、ホームランは参考にはならないけど、しっかり振ることができた。変化球に体を流されずに振ることができた」。高々と上がった打球は、バックスクリーン左の芝生席で跳ねた。プロ野球ファン注目の一戦で、今キャンプ初アーチ。球場の雰囲気を変えた1発に、栗山監督も「ザ・4番という感じ」と最大級の賛辞を贈った。

 蓄積された疲労が、打席での迷いにつながっていた。内外野の守備練習をこなし、実戦もフル出場。夜間練習も皆勤賞でバットを振ってきた。100キロ近くまで増量してつくりあげた体は、95キロ前後まで減った。あえて肉中心のメニューで食事を取っても、減量には歯止めがかからなかった。

 思うように動かない体。結果が伴わないと、頭は余計なことを考え始める。「しっかりバットで捉えようだとか、フォームのことだとか、球種だとか考えすぎてしまっていた。いろいろな考えを試合の中にまで持ち込んでしまった」。前日まで実戦5試合で17打数3安打。この日も2打席目までは音なしだった。

 本塁打の直前、福良ヘッドコーチにベンチで呼ばれた。「三振でもいいから、3球自分のスイングをしてこい」。抱え込んでいた苦悩が、吹っ切れた。「自分はどんどん振って合わせていくタイプ。思い出した。気持ちが消極的になっていた」。打席での迷いは、消えた。終わってみれば、1発を含め3安打の固め打ち。小谷野、糸井ら主力組が出場し始めた一戦でも、存在感は際立っていた。

 今キャンプ、同い年のルーキー大嶋が注目を浴びている。自らを「右の大嶋」と言っておどけるが、バットをプレゼントして参考にさせたり、この日も8回の大嶋の二塁打に「最後までちゃんと走れ」と“小言”を言った。プロ5年目。中心選手としての自覚も芽生えている。試合後、無数のカメラに囲まれた会見で「1年目を思い出すね」とニヤリ。だが、あの頃とは、実力も、懸かる期待も、比べものにならないほど大きくなっている。【本間翼】