<オープン戦:中日5-5楽天>◇25日◇ナゴヤドーム

 マー君の開幕戦登板準備が再び整った。楽天田中将大投手(23)が中日戦に先発し、3回、打者9人をパーフェクトに抑えた。18日の練習試合で投球時に右背筋の炎症を起こした。一時は30日の開幕戦登板が危ぶまれたが、順調に回復。昨季までのチームメート山崎には今季最速の152キロをマークするなど、不安を一掃した。球団創設8年目で初となる仙台開幕へ、最終試運転を終えた。

 田中は少し笑っているようにも見えた。2回、先頭に中日山崎を迎えた。プロ入りから昨季までの5年間、楽天でお世話になった大先輩との初対戦が実現した。「楽しかったですねえ」。146キロを続け、空振り、ファウルと追い込むと「ランナーもいない。真っすぐでいくしかない。力で」と選んだ3球目。腕を振り切り、たたき出した152キロは今季最速だった。嶋のミットは外角に構えていたが、真ん中高めへ。制球の誤差を超える球威で詰まらせ、中飛にねじ伏せた。

 1週間前から大きく前進した。先発した18日のオリックス戦(静岡)。初球で違和感を覚え、わずか1イニングで緊急降板した。昨年11月に星野監督から12球団で一番早く開幕投手に指名されたが、その大役に一時黄信号がともった。その後、短期間で回復。「ここまで投げられるようになるとは思わなかった」と明かした。精密検査で「思ったより軽かった」とはいえ、田中だからこその理由がある。

 超音波治療などで全面サポートするトレーナー陣の1人は証言する。「一部を痛めても、他の筋肉でカバーできる筋肉量がある」。鍛え抜いた100キロ近いボディーが、変わらぬパフォーマンスを可能にした。ただ「他の筋肉でカバーした投げ方だと、おかしくなる投手もいる。田中はおかしくならないから、先発ローテを守れるのでしょう」と加えた。「投げながら治す」センスが役立った。

 予定の3回を毎回奪三振の35球で終えた。球が真ん中にいき、顔をしかめる場面もあったが「原因は分かっている。問題ないです」と30日までに修正するつもりだ。何より、実戦で投げられた事実が一番重い。星野監督も「見たとおり。それほど良くなかったが、あいつ以上の投手はいない」と変わらぬ信頼を口にした。

 東日本大震災による日程変更がなければ、昨季の開幕戦に仙台で投げるはずだった。遅れてやってきた大役に、田中は「任されているところだし、シーズン初めにいないのは寂しい。いろんな人の協力があって、マウンドに立てている。そこはいつも忘れず、最大の恩返しは結果を出すことです」と言い切った。そんな気持ちのこもった投げっぷりを、待っている人がたくさんいる。【古川真弥】