<楽天5-0ソフトバンク>◇3日◇Kスタ宮城

 楽天塩見貴洋投手(23)が今季12球団最速、プロ初完封勝利で、チームに1勝目をもたらした。最速147キロの直球を軸に134球を投げ抜き、強力ソフトバンク打線を4安打に抑え込んだ。開幕からのチームの連敗を3で止め、星野監督に今季最初の白星をプレゼント。2年目左腕が田中との2枚看板襲名だ。

 疲れは感じなかった。8回を終え122球。「行くつもりでした」。首脳陣に問われるまでもなく、塩見は決めていた。9回1死から小久保に中前打を打たれたが、松田をツーシームで遊ゴロ併殺。ウイニングボールを捕球した一塁フェルナンデスがガッツポーズ。つられるように、満開の笑顔を見せた。

 「最大の武器」と公言する直球で手玉に取った。「気が抜けない。でも、小久保さんを抑えたら勢いを止められる」と敵の主砲をロックオン。最初は1回2死一、三塁。ピンチで迎えたが、直球中心に追い込み、外のフォークで空振り三振。4回は全て直球で攻め、最後は外角143キロで完璧に空を切らせた。6回は内角への直球3つで空振り三振。最後に安打を許したが「勢い」は封じた。

 星野監督も「走っていた」と認めた直球。実は一時、陰りが出ていた。オープン戦の球速は140キロ台前半。3月11日の日本ハム戦は6回1失点も、打たれた4安打のうち3本が直球だった。原因は分かっていた。「スクリューのせい。肘が下がっちゃうんです。それで、直球が悪くなる」。右打者の外に逃げながら落ちる勝負球。2年目の“目玉”と、昨秋から習得に取り組んだ。だが、リリース時に外側へ肘をひねる動作が、直球を投げる際にもクセとなり悪影響が出た。

 投げるべきか、投げないべきか。迷ったが「僕は、まだ若い。年を取って直球が落ちたら使えばいい」と決断。原点に戻り、初完封をものにした。星野監督は「初ですか?

 遅いね」と表情を変えなかった。オープン戦から塩見評は辛い。「ダメ」「あんな投球、いかん」「去年と変わらんな」等々。辛辣(しんらつ)にも聞こえる言葉でも、素直に受け止めていた。

 塩見

 厳しいのは、もっとやれると思われているからだと思います。

 プロへの下地を築いた大学でもそうだった。当時の監督に褒めてもらったのは、4年時に東北福祉大をノーヒットノーランに仕留めたときだけ。「僕は厳しくしてもらった方が良いんです」と星野監督にも感謝する。「おごることなく、次も良い投球をしたい」。謙虚に、最高の形で2年目のスタートを切った。【古川真弥】