<DeNA0-2広島>◇6日◇横浜

 マエケン、すごい!

 広島前田健太投手(23)が快挙を成し遂げた。6日のDeNA戦で、プロ野球史上74人目、85度目のノーヒットノーランを達成した。6回途中までパーフェクトで、2四球のみの完璧なピッチングだった。昨年の最終戦で9回1死まで無安打無失点も、逆転サヨナラ負けを喫した悪夢を消し去った。チームはこれで4連勝。91年以来の優勝を目指すチームに、これ以上ない弾みがついた。

 グラブでつかんだボールの感触を、しっかりと確認した。9回2死一塁。前田健はDeNA梶谷の打球を自らキャッチすると、丁寧すぎるほど慎重に一塁へ投げた。栗原が捕球するのを見届け、両手で力強くガッツポーズ。そこへ歓喜のナインが殺到だ。プロ野球史上74人目のノーヒットノーラン。前田健は、自身初めてという快挙に酔いしれた。

 前田健

 興奮しました。プロでできると思っていなかったので。本当にうれしいです。最後は今までにない緊張で、2死からはびくびくしていました。

 立ち上がりから最速150キロのストレートが切れた。そこにキレ味鋭いスライダー、チェンジアップを交え低めに集めた。開幕戦で中日打線に高めに入った球を痛打された反省を生かし、丁寧に投げ込んで相手打線の的を絞らせなかった。女房役の倉も「言うことないです。最高ですよ。全部の球種がよかったので、それを生かして打ち取ろうとリードした。あいつのスライダーは、分かっていても打てないくらいすごいスライダーですし」と絶賛した。

 マウンドでは、悔しい思い出が何度も頭をよぎった。昨季10月25日のヤクルトとの最終戦で、前田健は快投を続けていた。8回まで2四球のみの無安打投球。9回も簡単に1死をとったが、初安打を許すと、そこから悪夢の逆転サヨナラ負けを喫した。

 前田健

 そのことがかなりよぎりましたね。9回に打たれたので、また打たれるんだろうなとか。そのとき悔しい思いをしたので、まさかできるとは思っていませんでしたが、喜びは大きいです。

 広島では99年の佐々岡以来の快挙となる。前田健は、その佐々岡の背番号「18」を受け継いでいる。「18といえばエースナンバー。それに恥じないピッチングをしたい」と、広島の大黒柱の精神もしっかりと受け継いだ。

 この喜びを1月に結婚したばかりの早穂夫人に伝える。「これまでは勝っても一緒に喜んでくれる人はいなかったけど、今はいる。食事面でも気を使ってくれるので体は調子がいい」と話す。独身時代は登板直前にカレーやコンビニのおにぎりを食べたりしていた。それが夫人の配慮で食生活が改善された。物心両面で夫人の支えがエースをより大きく成長させた。

 これでチームは4連勝。91年以来遠のいている優勝やCS進出を実現するために最高の弾みがついた。エースは「今年のカープは強い。優勝目指していきます」と高らかに宣言した。【高垣誠】