<西武3-2日本ハム>◇17日◇西武ドーム

 今年も救世主は、この男だ。西武牧田和久投手(27)が、9回に右ふくらはぎがつるアクシデントに見舞われながらも完投して今季初勝利。前日16日に惨敗した日本ハムに逆転勝ちし、6連敗中だった本拠地西武ドームでの初勝利に貢献した。

 冷静な表情とは対照的に、マウンド上の牧田はギリギリの状態だった。9回2死一、三塁、直球を投げる度に、右ふくらはぎに違和感を覚える。点差はわずか1点。それでもウイニングショットに選んだのは、直球だった。「真っすぐを投げるとつる感じ。極力真っすぐを投げたくなかったけど、僕の生命線。つってもいいから(直球で)いこうと」。代打小谷野のバットが空を切った瞬間、力強く右こぶしを握った。

 今年も危機を救ったのは、サブマリンだった。チームは本拠地西武ドームで開幕から球団ワーストの6連敗中。「見えないプレッシャーがひしひしと伝わってきた」と重圧を感じながらも、はね返す力があった。抑え不在に苦しんだ昨季は、シーズン中盤から守護神転向で22セーブ。最下位から3位でのCS進出に大きく貢献した。「抑えは背負っているものが違う」と回想したが、あの時と同じように、救世主としての輝きを放った。

 開幕を3日前に控えた3月27日、牧田自身もどん底の状態だった。イースタン・リーグ巨人戦に調整登板したが、3回2失点。キャンプから一向に上がらない現状に、気持ちはぐらついた。「全然ダメ。どうしたらいいか分からなくなっちゃって…。もう開幕なのに」と、もらした。普段はひょうひょうとした姿が印象的だが、表情は曇りっぱなしだった。

 試行錯誤する中、行き着いたのは、自分を取り戻すことだった。「悩んでばかりいても、前に進まない。試合は待ってくれないですから。大事なことは自分が持ってる力を出すこと。自分の力を信じて」と言い聞かせた。この日も6回まで毎回安打を許しながらも、失点はわずかに1。「いつも通り自分のピッチングをしよう」と貫いた結果が、自身2度目の完投勝利だった。「(チームが)まだ3勝なので、全然喜べない。何とか2ケタ。先発が何とか頑張って、日本一を目標に1日1日頑張っていきたい」。救世主の誓いに、本拠地西武ドームが沸いた。【久保賢吾】