<阪神2-3楽天>◇19日◇甲子園

 がむしゃらに!

 あきらめん!

 新井兄弟を見習え!

 弟良太が8回、意地の代打本塁打をガツン。兄貴浩も4回に先制タイムリーを放った。阪神は交流戦で3連敗。ついに借金生活に突入したが、新井兄弟が何とかしてくれるはず。今日こそ連敗脱出だ。

 新井良太内野手(28)の表情は気合で真っ赤に染まっていた。がむしゃらなスイングから打球が放たれ、右翼ポール際に着弾。まだビハインドの展開でもおかまいなしに、右手を内側から高々と突き上げた。そのひと振りで、動作ひとつで、一瞬でムードを一変させる-。この男にしかできない芸当だった。

 新井良

 がむしゃらだった。体が勝手に反応した。先頭だったし、次は鳥谷さんに、平野さん。いつもと変わらず、何とかつなぐんだという気持ちだった。

 2点を追う8回無死、代打林威助の代打で登場。左腕ハウザーのストライク4球すべてを強振し、1ボール2ストライクで迎えた6球目だ。外角高めに抜けた139キロ直球に食らいついた。10年オフに阪神移籍後、初アーチとなる1号ソロで反撃ムードを作成。兄貴浩と同じ試合での兄弟打点は初めてとなった。

 12年、自身のテーマソングにプリンセス・プリンセスの「世界でいちばん熱い夏」を選択。幼少期に発表された曲は決して思い出の1曲という訳ではなく、熱い思いが込められている。「阪神のスローガン『熱くなれ!!』にもかかっているし、何よりいろんな年齢層に喜んでもらえるから。自分なんかが出て、盛り上がってくれるとうれしいしな」。もちろん、一番の「盛り上げ曲」は1発だと分かっている。

 新井良

 長打を打てるようにならないと。そりゃ、ホームランを打ちたいよ。

 昨秋の安芸キャンプからテークバックを早く大きく取るフォームに変え、バットがスムーズに出るようになった。兄も「そのまま続けたらいい」と納得してくれたスタイルを継続。休日には必ずと言っていいほど甲子園室内練習場で打ち込み、フォーム固めに取り組んだ。「人事を尽くして天命を待つんよ」-。良太がよく口にする言葉には、努力の足跡がにじんでいる。

 新井良

 秋のキャンプから片岡さん(打撃コーチ)と、どうすれば長打を打てるかということに取り組んでいたので。打てたことは良かったけど、まだまだこれから。続けられるように練習していきたい。

 どこまでも純粋なギラついた目に、向上心の塊が見え隠れした。