<ヤクルト6-3DeNA>◇15日◇神宮

 2点を追う6回1死二、三塁、ヤクルト小川淳司監督(55)が勝負手に出た。捕手の中村に、代打福地。現在正捕手の相川、2番手川本がケガで離脱している。ベンチには10年に1度だけマスクをかぶっている30歳の新田玄気捕手と、高卒2年目の西田しかいなかった。「そのためにキャッチャーを3人にしているんですから。勝負をかけました」と言った。

 福地が期待に応えて同点適時二塁打を放つと、7回からは新田が今季初めて守備に就いた。プロ2度目の1軍マスクながら、直球主体の好リードで7回を3者三振に切る。8回2死まで5者連続三振に打ち取った。日高、山本哲の長所を引き出し、試合の主導権を渡さなかった。

 けが人続出のチームで、バックアップメンバーが活躍する意味は大きい。新田は1点勝ち越した直後の8回に、2点中前適時打でプロ初打点を挙げた。「シンに当てようと思った。1点差と2点差では全然違いますから」と笑った。

 第4の捕手として、キャンプは1軍スタートだったが、開幕後は2軍暮らしが続いた。9日の巨人戦から緊急昇格すると、着の身着のまま新潟入りし、市内のイトーヨーカドーで私服を購入。スクランブル態勢でチームの力になった。小学生時代はトランポリンの西日本大会で優勝した異色の経歴を持つ。高い運動能力で、遅咲きのチャンスをつかんだ。

 8月25日に第2子となる長男幸大くんが誕生したばかりだった。中大出身で小川監督の後輩。初打点と聞いた指揮官は「ボールもらってあげないといけないね」と笑った。「大きな幸せ」をつかんだ脇役の活躍で、4位広島に2ゲーム差。明るいムードで、残り19試合に突入だ。【前田祐輔】