<阪神5-2中日>◇23日◇甲子園

 中日ドラフト2位の西川健太郎投手(19=星稜)がプロ初先発で輝いた。来季先発テストの阪神戦で5回を投げ、鳥谷のソロによる1安打1失点。球団では87年近藤真一のノーヒットノーラン以来となる、高卒新人初先発の勝ち投手は逃したが、孝行息子の登場に高木監督は大喜びだ。前日は21歳の伊藤準規も今季初勝利。V奪回へ、来季は最強の投手王国が誕生するぞ。

 守道竜の新星が甲子園で輝いた。19歳とは思えないマウンドさばきで阪神打線を圧倒した。西川がプロ初先発。4万6000超の完全アウェーで5回を投げ切り、許したヒットも失点も鳥谷のソロ1発だけに抑えた。招待した母の由紀子さん(53)が見守る前で、圧巻、充実の66球だった。

 西川

 甲子園は小さいころから行きたかった場所。全然構えたところにいかなかった。でも球は走ってたし、キレで勝負できるかなというのはつかめました。

 184センチの長いリーチから繰り出すゆったりフォームから、打者の手元で伸びる。「腕の振りと球が違う」と権藤投手コーチも絶賛の投球で、金本やマートンが凡打の山を築いた。最速は142キロ止まりだったが、最遅113キロのカーブを交えた緩急操作も抜群。星稜出身の元祖速球派、直系OBの「小松辰雄2世」の前評判に、偽りなしだ。

 西川

 緊張しまくりでした。金本さん、桧山さんと小さい時見てきた選手ばかり。でも感動がありました。父がファンだったので。

 中3時に亡くなった父雅幸さん(享年57)は熱狂的な虎党だった。幼いころから夕飯時のテレビは阪神戦だった。多感な時期、頭に焼き付いたのは03年、05年の優勝を引っ張ったV戦士。そして何の運命か、その中心を張り今季限りで引退する金本と最初で最後の夢対決が実現できた。あこがれの44歳に真っ向勝負を挑んだ結果は四球と右飛。「俺、絶対プロに行くから」。亡くなる直前に約束した父も天国で喜んでいるに違いない。

 高木監督

 よう投げたんやない。1年生にしては落ち着いとったわ。来年の開幕2戦目だよ。1戦目は(伊藤で)もうできたから。

 来季先発テストで、前日勝利した21歳伊藤に続く連発合格。大喜びの守道節も全開だ。救援陣が逆転を許し、87年近藤真一以来となる球団の高卒新人初先発勝利は逃した。だがV奪回へ、より強固な投手王国が建国できる期待は膨らんだ。

 西川

 釜田はもう7勝もしてる。差が開いたなら、少しでも縮めていければ。

 昨夏の石川大会準決勝で敗れ、甲子園を阻まれた金沢のライバル釜田佳直は、楽天ドラ1で新人王候補になった。追いつけ、そして追い越せ。西川の時代も、やってきた。【松井清員】<西川健太郎(にしかわ・けんたろう)アラカルト>

 ◆生まれ

 1993年(平5)4月18日生まれ、石川県金沢市出身。184センチ、73キロ。右投げ右打ち。

 ◆日本一

 星稜中では軟式野球部で2度全国制覇。

 ◆夢の甲子園

 星稜では1年秋からエース。3年夏は石川大会準決勝で釜田佳直の金沢高に2-5で敗戦。6月に左手甲を骨折した影響で救援での登板だった。甲子園出場経験なし。

 ◆星稜OB

 元中日小松辰雄氏のサインボールと山下智茂総監督のサイン色紙は寮に持ち込んだお守り。今年年明けには母校を訪れた松井秀喜と対面し「自分の気持ちを持ってしっかり頑張れ」と激励された。

 ◆幻の1位

 11年ドラフト2位で中日入団。背番号32。当初は3球団が競合した高橋周平の外れ1位の予定だった。名古屋の寮生活では高橋と大の仲良し。

 ◆持ち球

 最速は147キロの直球、スライダー、カーブ、チェンジアップ。