<日本ハム4-2西武>◇29日◇札幌ドーム

 日本ハム糸井嘉男外野手(31)の豪快な決勝打が、3年ぶりのリーグ優勝へチームを大きく前進させた。3回2死二、三塁から先制の中越え適時二塁打。中堅フェンスを直撃する会心の一打で、自身の連続試合安打も「11」に伸ばした。9月の月間打率は驚異の4割。V争いの佳境で勢いを増すそのバットで、覇権奪回に導く。

 糸井の一打が、球場のボルテージを最高潮にさせた。3回2死二、三塁。西武岸の112キロカーブをとらえ、中堅フェンス直撃の先制の2点適時二塁打を放った。「西武戦で打ちたいと思って、打席に入りました」。勝てば優勝へ王手をかける一戦。大事な試合と位置づけ、決意に満ちていた。「昨日の中田のように本塁打とはいかなかったですけど、何とか打てました」。二塁上で、前日の中田と同じようにベンチへ向かってガッツポーズを見せた。

 バットの勢いが止まらない。この日の決勝打で連続試合安打は「11」となった。お立ち台に呼ばれ、好調の要因を問われると「まさか、これは“規則正しい生活”ではないでしょうか」とニヤリ。この“名言”は、09年6月に本拠地で初めてお立ち台に立った時に、同じ質問をされて答えたもの。あの時と同じようにマイクでも球場を沸かせた。

 しゃべりも絶好調だが、本業はもっとすごい。左脇腹痛から復帰後、20試合で75打数30安打。9月は打率4割で、首位打者争いでもトップの西武中島に4厘差と迫った。「個人タイトルはそんなに…。とにかく優勝したい」。09年以来の歓喜のためだけにプレーをしている。

 練習中も糸井の行動を誰も止められない。26日ロッテ戦の試合前。全体アップを終えた糸井が突如、三塁側内野スタンドへ向かい、階段をダッシュで駆け登った。ゆっくり降りてきて、座席に腰かけて休憩。たった1回きりでグラウンドへ戻った。突然の行動に、付き添った石黒トレーナーも「メニューになかったのですが、本人がいきなり…」と苦笑い。それでも「理由は分からないですけど、1本を集中してやるのが、いいのかもしれませんね」と温かく見守った。チームの勝利に貢献したいという純粋な思いを知っているからだ。

 「僕は必死にやっています。早く決めたいです」。絶好調男が有終の美まで突っ走る。【木下大輔】