侍ジャパンの主将、巨人阿部慎之助捕手(33)が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の3連覇へ向けて秘策を披露した。29日、都内で取材に応じた阿部は、国際試合で外角に広いストライクゾーンに注目。自身がMVPを獲得した、07年の北京五輪アジア地区最終予選を引き合いに「逆方向へ軽打」を力説した。メンバー選考会議から一夜明けたこの日の朝には、山本浩二監督(66)から電話をもらい、来年1月のグアム自主トレ視察の意向も伝えられた。日本一の余韻もつかの間に侍モードへ突入する。

 朝の「直電」だ。テレビ番組の収録に向かう前、阿部の電話が鳴った。声の主は山本監督で、一声は「(メンバーに)決まった中で、お前にトップで連絡させてもらった」だった。阿部は「『グアム、行こうかな』って言っていました。巨人は候補に入ってるメンバーが多いだろうから。俺、長野、勇人。ピッチャーは内海、沢村か?

 ぐっさん(山口)もいる。監督、本当に来そうだよ」と真顔で明かした。

 侍メンバー選定の翌日、わざわざ電話をくれた。しかも、来年1月のグアム自主トレまで視察に来てくれる。山本監督が、いかに阿部の存在を重要視しているかがうかがえる。

 候補選手が決まり、阿部のテンションも高まっている。この後、話は国際試合の打撃論に及んだ。

 阿部

 (国際試合は)普段より、外のストライクゾーンが広い。自分でボールと思っているところを、平気でストライクと言われる。対応を、少しだけ変えないといけない。

 07年の北京五輪アジア地区最終予選。阿部は13打数10安打、打率7割6分9厘という成績を残し、文句なしのMVPに輝いた。タイプが異なるフィリピン、台湾、韓国の投手陣に対し、軽打に徹し抜いた。

 外角に目を付け、ゴロで三遊間を破る単打。そこに活路がある。11月のアジアシリーズでも確認し、自信を深めた。

 阿部

 反対方向に打つ技術は、日本人は世界でもトップレベルにある。みんなであれが出来れば、勝てる。走者がいなければメークチャンス。チャンスの時は積極的に。そのスタイルは変えずにね。

 「侍流」の徹底は、相手国の分析よりも優先順位で上にある。「頭でっかちはダメ。キューバ、キューバって言ってもね。その前の2試合に負けたら意味がないんだから」と続けた。阿部のみならず、他の選手にも大いに参考になる秘策といっていい。

 ハワイ優勝旅行から帰国する12月中旬から、早速準備に入る。「グアムには結構、上げた状態で入る。2月中旬に試合がある。そこにちゃんと出ないと」とし、例年より2週間ほど調整を前倒しする。切れ味鋭い短刀で、ライバルをさばいた先に3連覇がある。阿部は自身の経験則から知っている。【宮下敬至】