初夢は「五輪復活」だ!

 3月に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表の主将を務める巨人阿部慎之助捕手(33)が、壮大な使命感を持って大会に臨むことを宣言した。日本の3連覇がかかる第3回大会で世界一を狙うことを誓いつつも、最大目的を野球の五輪正式競技復活に定めた。日本、米国、韓国、キューバなど国境を超えた「野球界」の願いをかなえるためにも重要な世界舞台となる。

 日本のプライドをかけて戦う-。侍ジャパン主将、阿部の心中は、もっと、もっと大きな“舞台”を見据えていた。「このWBCは勝つことも大事だけど、もっと大事なことは大会を成功させることだと思う。俺の一番の大きな目標はWBCを盛り上げて東京五輪の時に野球が復活してほしいなと。世界に『野球ってすごいな』って伝えたい。それ(五輪招致)が一番でしょ」。国際大会の意味を重々、感じてるからこそ野球人としての夢を大会に託した。

 東京が招致している20年の夏季五輪での復活を強く望んでいる。「世界中のアスリートの祭典がオリンピック。野球という競技そのものを世界にアピールする絶好の機会にもなる。そこで真の世界一を競うようになれば、それが一番いいと思う」と、野球が世界中に認知され、さらなる普及も願った。昨季、忘れられない光景として「五輪の銀座パレードに野球選手がいなかったのが残念だった」と、ロンドン五輪後は疎外感すら覚えたという。

 競技時間が不確定でテレビ放送に適していないことなどがネックになり、08年の北京五輪を最後に正式競技から外された。だが、復活を望む声は根強く、国際野球連盟(IBAF)は、1試合を9回から7回に短縮して行う案を検討している。20年夏季五輪の実施競技は9月の国際オリンピック協会(IOC)総会で最終決定される見通し。正式競技復活のためIBAFを中心に尽力していることは事実だ。

 現状では世界一を決める舞台はWBCしかない。09年の前回大会をもって“代表引退”を決めていた。だが、五輪競技に復活させることが野球人としての使命として、今回の代表入りを快諾した。「日本代表として戦うということを若い世代に伝えないといけない。日の丸を背負って戦うことは、なかなかない。だからこそ、その意味を一緒にプレーしながら伝えようと思った」。11月に行われたキューバとの強化試合にもケガを押して同行したことに信念がにじみ出ていた。

 最後に力強い言葉も付け加えた。「当然、出るからには3連覇を目指してやる。難しい戦いになると思うけど、日本の力を見せたい。それが俺たちの使命だから」。日本球界の重責を一身に背負い「野球」の素晴らしさを世界にアピールする。阿部にとって大きな、大きな意味がある大会が、いよいよ3月に開幕する。【為田聡史】

 ◆野球の五輪競技復帰への道のり

 国際オリンピック委員会(IOC)が20年夏季五輪で競技に採用するのは1競技。野球とソフトボールが統合して1競技となり、空手、ローラースポーツ、スカッシュなど7競技との争い。5月のIOC理事会で1つまたは複数に絞り込み、20年夏季五輪の開催都市が決まる9月の総会(ブエノスアイレス)での審議で最終決定する。