<ソフトバンク4-8楽天>◇6日◇ヤフオクドーム
楽天が“星野流采配”でソフトバンクに競り勝ち、単独首位に立った。先発戸村が3回途中4失点で勝ち越しを許すと、星野仙一監督(66)は前日先発した則本昂大投手(22)を送り込んだ。前夜、プロ最短の1回4失点でKOされた新人右腕は3回1/3を無失点。打線が5回に逆転し、1カ月ぶりの7勝目を挙げた。シーズン半分の72試合を貯金10。就任3年目で初めて首位で折り返した。
星野監督は腰を上げた。3-4の3回だ。先発戸村が2死三塁で、ソフトバンク江川に早くも3つ目の四球を与えた。3回までに3点をもらいながら、簡単に勝ち越しを許す展開に我慢も尽きた。杉永球審に交代を告げる。「則本」。同球審は少し驚いた顔をした。アナウンスが流れると球場もざわついた。小走りでマウンドに向かった右腕は、前日に先発したばかりだった。
則本は、いつもと違う持ち場で、がむしゃらになった。「昨日はコントロールを意識し過ぎました。今日は腕を振りました」。最初の打者、今宮は最速151キロの直球中心に攻めた。9球粘られ四球を与えて満塁としたが、続くラヘアを空振り三振。そのまま6回まで0を重ねた。味方打線の逆転を呼び、黒星の翌日に白星を手に入れた。
してやったりの星野監督はおどけた。「昨日?
則本は投げたか?
俺の記憶にはないなあ」と含み笑い。前日の降板後にブルペン待機させることを決め、この日の朝、佐藤投手コーチを通じて伝えた。1回27球しか投げておらず、体力的には問題なかった。「こんな展開を読んだわけじゃないが、あり得るんじゃないかと。あのピッチャーだから。読み通り」と、いつしか話題は戸村に向けられ、最後は「四球にヒット。完投もできるだと?
あいつ(戸村)をその気にさせるな!」と語気を強めたのも、星野監督らしかった。則本のことを多くは語らなかったが、異例の起用には星野流の愛情が詰まっている。
2年前に現場復帰し、驚いた。「いつから中6日が主流になったんだ!?」。現役時代は先発、抑えとフル回転した。その時から身に染みて感じたのは「投手は白星が最高のくすり」ということ。負けて次の登板まで過ごすより、勝って過ごしたい。それが、中6日なら1週間も空く。ソフトバンク戦3戦3敗、6月6日の6勝目の後は4連敗中だった則本に最速の“中0日”でリベンジの機会を与えた。
よく「俺は何も怖くない」と口にする。一見、常識外れでも、信じた道を突き進む。変則右腕の西武牧田に左打者を9人並べたことがある。攻撃力重視で守備に難のある銀次、枡田で二遊間を組ませたこともある。「そんな監督、アホや」と自虐的に笑うが、結局は「信じて送り出す。俺だって不安。でも、それを顔に出すと、選手にも相手にも伝わるんだ」と腹をくくっている。
就任3年目で初めて首位で折り返した。それも、貯金10を携えて。「まだ半分やないか」。意に介さないが、小さい声で「粘りが出てきたな」とも言った。信じた選手たちが、応え始めている。【古川真弥】<星野監督ならではの采配>
▼左打者9人
12年7月7日の西武戦で、牧田に対し左打者を9人並べた。牧田からは1点しか奪えなかったが、111球を投げさせ6回で降板させると、2番手以降から11得点で大勝した。
▼二遊間
12年の序盤は打力を買い、二塁銀次、遊撃枡田で起用。守備力には目をつぶり、飛躍のきっかけを与えた。
▼抜てき
投手は釜田、辛島、野手は岡島、西田ら1軍実績のない選手でも、2軍で結果を出せば昇格即起用。「料理と一緒。旬な時に、すぐ使う」と星野監督。
▼新人開幕投手
今季は則本を開幕投手に抜てき。エース田中のWBC出場による代役ではあったが、ベテランのダックワースも候補に挙がる中、将来性を優先した。



