<阪神3-6巨人>◇15日◇甲子園

 巨人が、前半戦の首位ターンを決めた。1・5ゲーム差と迫られて迎えた2位阪神との首位攻防戦。初回の守りで寺内、坂本コンビが美技を魅せ、5回には流れを引き寄せる阿部の23号ソロ。さらに6回には亀井の好走塁ありと、原辰徳監督(54)の目指すプレーが随所に出るなど、大一番の強さが際立った。中日に3連敗したショックを難なく切り替え、2位阪神との差を2・5ゲーム差に広げた。

 蒸し暑い甲子園のダッグアウトから、原監督は頼もしげにナインを見渡した。「こういう一戦で、思い切った攻撃的なプレーができるというのは、非常に価値がある」。1・5ゲーム差で迎えた3連戦。初戦を勝ったことで、前半戦の首位ターンを決めた。

 ただ勝っただけではない。随所に原監督の目指す野球を見せた。最初に見せたのは二遊間コンビだ。1回無死、寺内が、センター前に抜けそうな西岡の打球を体勢を崩しながら逆シングルで捕った。すると坂本が「寺内さんの体勢を見て、厳しいと思った」と、トスを呼んだ。寺内から坂本と経て、一塁へ転送してアウトを取った。

 寺内が「いつかこういうプレーでアウトにできればいいね、と話していた」と振り返るプレー。それを大一番の最初の守備で出せたのは、準備のたまものだった。今年のキャンプでも居残りの特守で、ひそかに繰り返していた。無駄になるかもしれない準備をひたすら繰り返したことが、この日のワンプレーにつながった。

 好守を見せた寺内は7月6日のDeNA戦以来となる二塁スタメンだった。今季は支配下登録されている野手のうち31人が1軍出場を果たし、ことごとく活躍している。これを原監督は「偶然ではない。必然だね」という。選手はしっかりと備え、指揮官は準備のできている選手を使う。

 5月26日のオリックス戦では「準備不足」と断じた村田を2回の守備で下げたほど、徹底している。キャンプから「力のある選手を使うのが鉄則ですから」と言い続けてきた。その姿勢は崩れない。この日は小山の抹消で、枠が1つ空いていたにもかかわらず、無理に埋めるようなことはしなかった。

 5点目を奪った亀井の走塁には、原野球の神髄があった。6回1死一塁、矢野の左前打で三塁まで達した。攻撃的にいった結果の失敗なら原監督はとがめない。それも、大舞台で選手が力を発揮できる土台になっている。「好きにやらせていただいてます。だから僕は失敗を恐れずにやるだけです」。亀井の言葉が、それを裏付けた。

 前半戦のヤマ場ともいえる決戦の地に、原監督は前夜バスで移動してきた。2時間半の道のり。バスの中では「ボーン・レガシー」というアクション映画が流された。シリーズものの4作目の作品。前の3作品を見ていないと、理解するのは難しい内容だった。「それでも理解しようと努めたよ」。3連敗で疲れた頭を休ませるのではなく、未知の映画に挑んだ。考え続けることで、3連敗の記憶を吹き飛ばした。

 指揮官の頭の切り替えがナインにも浸透した。「長いペナントレースの中で、この3連戦は前半戦を締めくくるという意味においても重要だった。両軍が集中して、高いポジションで戦ってますから、そう言った意味では、先勝できたのは大きいと思います」。納得の勝利につながった。【竹内智信】