<広島1-7阪神>◇7日◇マツダスタジアム

 ふーっ、踏みとどまった。負ければ巨人に優勝マジックが点灯する崖っぷちで阪神岩田稔投手(29)が復活星だ。毎回のように走者を背負いながらも3併殺でしのぎ、鯉打線にゴロを打たせ6回1失点。約3カ月ぶりの勝利を手にした。首位巨人とのゲーム差7・5は変わらないが、能見に続く先発左腕の復活が逆襲の推進力になる。

 白星の余韻に浸る暇は1秒もない。岩田は顔色ひとつ変えなかった。

 「白星は3カ月ぶりですね。自分にとってはすごくうれしいけど、それだけチームに迷惑をかけていたということ。これから取り返さないといけない」

 5月4日ヤクルト戦以来の白星となる今季2勝目。攻め続けて勝利した。

 「(バラつくのは)気にせんと、攻めないといいボールを投げられないんで」

 1軍復帰2戦目、多少制球が乱れようが、荒々しく腕を振った。6回で5四死球を与えながら4安打1失点。全85球のうち53球が直球系だった。最速149キロを4球も計測。その直球系で併殺打を3回奪うなど、ムービングボールでゴロを打たせる本来の姿が戻った。

 「2軍に落ちて2、3週間は正直、どうにかなりそうな気分だった。でも、考えた。今は何をやってもダメな時期なんだ、とね。そういう時もある、とにかく頑張ろう、と」

 5月11日ヤクルト戦で4回途中5失点KOされ、翌12日に出場選手登録を抹消された。先発陣の軸と期待された男が2カ月以上に渡って2軍再調整。08年に1軍ローテ定着後、不調が原因での2軍降格は今季が初めてだった。

 心が折れそうになった時、便箋に書き込まれたフレーズの数々が脳裏によみがえる。1年前の12年7月、四国に住む男性から送られてきた手紙。何試合も防げずにいた初回の失点を、痛烈に批判した内容だった。

 「もう、いいかげんにしろ」「学習能力がないんだったら、もう必要ない」「引退してください」

 一言一言が心にグサッと突き刺さった。自分のためを思ってくれた、厳しくも温かいゲキ。もう1度ファンから信頼してもらえる投手になりたい-。熱く強い決意があるから、どん底からでもはい上がれた。

 満を持して1軍復帰した前回7月31日中日戦は、8回2安打1失点だった。「イメージは元巨人の斎藤雅樹さん、ヤクルトの館山さんやな」。見えやすくなっていた球の出所を矯正するため、リリースポイントを下げた結果、ボールに力が乗るようになった。負ければ自力優勝が消える可能性もあった一戦で粘投。もう、復活と言ってもいいだろう。

 「いつも立ち上がりに先制されていた。今日はなんとか粘れてよかった。これからも攻めて攻めて攻めるだけ。攻撃的なピッチングをしていきたい」

 首位巨人との7・5ゲーム差は変わらないが、Vマジック点灯はまたもや阻止。逆転Vを狙う虎に欠かせない男、岩田稔が帰ってきた。【佐井陽介】

 ▼岩田は広島戦で08年8月20日(広島)以来、5年ぶりの勝利で自身の連敗を6で止めた。また2回にマークした二塁打は自身2本目。昨年8月3日広島戦(マツダスタジアム)の2回に打って以来だった。いずれも大竹からだった。