<ヤクルト7-11中日>◇28日◇神宮

 ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)に新たな夢が膨らんだ。9回に3試合連発となる51号ソロを放ち、月間17本塁打のプロ野球新記録をつくった。5回の適時打と合わせて2安打2打点をマークし、打率3割3分9厘で51本塁打と合わせて2冠となった。108打点はリーグ2位で、トップのDeNAブランコを9差で追う。日本記録55発の更新だけでなく、04年松中(ダイエー)以来となる3冠王の可能性も出てきた。

 どんな試合展開でも、今年のバレンティンは気を抜かない。6-11とリードされた9回1死走者なし。敗色濃厚でも、スタンドに残る本拠地神宮のファンには楽しみがある。「こういう試合が続くなか、期待を感じている。集中力を最後まで切らさないでいけた」。高く舞い上がった打球が、グングン伸びて左翼席へ。今季最多の借金23とチームが低迷するなか、豪快な3試合連発で明るい話題を届けた。

 勢いが止まらない。8月は17発目で、月間本塁打の日本記録を更新した。シーズン最多55発の記録も現実味を帯びてきて、まともに勝負してくる投手は少ない。「最初からストライクはこないとわかっている。その中で甘いボールを仕留めようと思った」。2ボールからの3球目。カウントをとりにきた中日岡田のスライダーを、フルスイングで仕留めた。

 劣勢でも持続する集中力に加えて、配球の読みがさえる。チームの志田宗大スコアラーは「ヤクルト時代のラミレス(DeNA)はデータと配球をかなり勉強して成功した。バレンティンも同じぐらい聞いてくるし、研究熱心。そしてラミレスよりも思いきりがいいから本塁打が多い」と証言。ストライクゾーンに入ってくる限られたチャンスを逃さず、本塁打にする技術はラミちゃん以上だ。

 首位打者を快走していた中日ルナが故障で規定打席を割り、打率でもトップに躍り出た。5回の適時打と合わせて108打点はリーグ2位。3冠王も狙える位置につけ「そのことは考えないようにしている。今の好調をキープできるようにやっていきたい」。年間換算66発の量産ペースは衰え知らず。大記録誕生の予感がプンプンしてきた。【柴田猛夫】