<巨人2-2中日>◇1日◇東京ドーム

 巨人菅野智之投手(23)が、「二枚腰」を発揮した。先発したルーキーは2回に2失点したが、その後復調。9回まで投げ抜く131球の力投で、盤石の救援陣につなぎ、引き分けに持ち込んだ。勝負の9月に合わせて調子を上げる頼もしさで、エース内海と並ぶ2枚看板として連覇に貢献する。阪神が敗れ、優勝マジックを19とした。

 打席が回ってきそうな8回も、ベンチ前で鉄砲肩のキャッチボールをしていた。「最後まで投げるつもりだった」と、菅野の意思表示だった。9回を任されたからには抑える義務があった。スライダー3球で2死とし中日の伸び盛り、高橋周だった。アウトローに直球を制御した。見逃し三振を見届けると雄々しくグラブをたたいた。延長戦は、最強の中継ぎユニット“スコット鉄太朗”に託した。

 高低の修正をした。立ち上がりはボールが放射状に抜け、全体的に高かった。2回は無死一塁から平田、クラークに連続四球を与え満塁とした。9月1日の時点で、規定投球回に到達している投手の中で、最も与四球が少ない投手(28個)だった。珍しい乱調を2失点でしのいだ。3回からは「いつも通り。ボールを取って投げる感じ」で普段の菅野だった。

 23歳にして老練な制球力を持っており、スムーズに修正した。そもそも「調子は悪くなかった」。2回までも、内角の要求が外角に入る、あるいはその逆の「逆球」はなかった。コースに投げ切れていたからこそ微調整で済んだ。3回からは淡々とアウトを重ねていった。9回を投げきった投手は実に6月16日、エース内海以来だった。

 先発が深いイニングまで到達する。連覇へ歩を進める巨人にとって懸案事項だった。「ギリギリ合格点ですか。オールスターの前、早く降りた試合があった。その分、これから返していきたい」と、本分をよく理解していた。原監督は「あの1イニング。四球が絡んだ。でも、よく投げた。よく投げたでしょう」と認めた。新人王を争うヤクルト小川に並ぶ12勝目は逃しても、自力でマジックを減らした。菅野の131球には白星と同等か、それ以上の価値がある。【宮下敬至】