<阪神1-4巨人>◇7日◇甲子園

 44歳ベテランが別れを告げた日、19歳ルーキーの神話も消滅した。2度目の巨人戦先発となった阪神藤浪晋太郎投手(19)が村田と長野に2ランを浴び、7回4失点で負け投手となった。大阪桐蔭時代から無敗を誇っていた甲子園で巨人に沈められた。阿部への死球から配球が偏り、痛打された。1試合2被弾もプロ20戦目で初の屈辱。厳しさをまざまざと学んだ。

 黄金ルーキーの「甲子園不敗神話」が消えてしまった。藤浪は一瞬の心のスキを突かれた。3回まで無失点。1点リードの4回、先頭阿部への4球目は狙い通りに制球できず、足元を襲う。左膝内側を直撃し、目の前で敵の主砲がもん絶する。すぐさま脱帽し、中西投手コーチや西岡が駆け寄った。仕切り直して4番村田と対戦。しかし、配球は外角に偏った末、甘いカットボールを完璧に拾われた。左翼に逆転2ランが飛び込んだ。

 藤浪は痛恨の1球に「自分の失投です。(死球は)引っ掛けてしまいました。動揺はなかったです」と振り返る。心の揺れはないと強調したが、和田監督は「死球だな、やっぱり。そこからまったくインコースに突っ込めなくなった。(外)一辺倒で打ち取れるほどプロは甘くない」と指摘。球界の大先輩にぶつけてしまい、無意識のうちに遠慮が出たか。歯車が狂うワンシーンになってしまった。

 ここまで10勝し、本拠地でも5連勝中だった。甲子園で春夏連覇した昨年センバツから14連勝中。無敗の剛腕は「甲子園の申し子」だった。そんな地の利も巨人打線のアーチ攻勢の前に消えてしまう。5回1死二塁。今度は長野だ。外寄り高めの直球をとらえられると右翼ポール際へ。浜風が吹いていれば押し戻される打球が、この日は不運にも無風。無情にも黄色いポールの真下へ吸い込まれていった。7回4失点で降板。人生初めて甲子園で黒星がついた。

 「別に気にしていなかった。負けたのは、もちろん良くないです。でも、甲子園で負けたからどう、とは思わない。今日は球が全体的に高かったですし、あまり良くなかったです」

 序盤から球が上ずった。5回先頭からは大きく腕を振りかぶらず、セットポジションで投げた。「バランスが良くなかったのもある」。次第に制球は定まった。6、7回は6人で片づけ、修正能力の高さは示した。

 桧山が引退表明した特別な日だった。25歳差の藤浪も「1年しか一緒にやらせてもらえなかった。同じチームの先輩が引退されるのは、すごく寂しい。もっと一緒に長くやらせてもらいたかった」と神妙だった。去りゆく神様のためにも白星を目指したが、王者の返り討ちに遭った。高卒新人が巨人戦で2勝すれば阪神では67年江夏以来だったが達成できず。初めて、甲子園で笑えなかった。【酒井俊作】