中日川上憲伸投手(38)が球団から戦力外通告を受けていたことが3日、分かった。今季は右肩痛で出遅れ、満足な働きができなかった。主力の高齢化に伴うチームの若返り方針のもと、中日で一時代を築いた元エースが来季構想から外れた。川上は現役続行を希望し、投手コーチへの就任要請や引退セレモニー、退団会見を辞退。最悪引退も覚悟しながら、他球団移籍の道を探ることを決めた。

 川上憲伸がドラゴンズを去る。球団が9月末に戦力外を通告していたことが判明した。ナゴヤ球場で2軍練習に参加した右腕は、「球団からそういう話がありました。来年も現役で、ここで続けるつもりだったので、どちらかというとショックですね」と厳しい表情でコメント。「年齢的なこともあるけど野球しかないので」と、他球団で現役を続けたい思いを明かした。

 昨年メジャーから4年ぶりに古巣復帰したが、今季は右肩痛で初登板が8月末まで遅れ、先発5試合で1勝1敗、防御率3・21の成績。残り試合の登板機会なしで、9月25日に出場選手登録を抹消されていた。西脇編成担当は「こういうチーム状況だし、世代交代で若返りもはからないといけない。我々も断腸の思いです」と説明。主力の高齢化に伴うチームの若返り方針のもと、国内では竜一筋12年で一時代を築いた元エースが来季構想から外れた。

 球団は来季、投手コーチのポストを用意した。それは98年ドラフト1位で2度の最多勝を獲得するなど、中日で116勝、日米通算124勝を挙げた功労者へのせめてもの報い。だが川上は「まだ指導者に頭を切り換えられません」と現役にこだわり、丁重に辞退した。さらに、10月5日のナゴヤドームでの今季最終戦(対DeNA)で退団セレモニーを行うことを打診したが、こちらも固辞。「熱心に応援していただいたファンに心から感謝しています」と話す一方で、退団会見も行わず、来季からはライバル球団の一員として中日と戦うプライドを示した。西脇編成担当は「環境が変わって、今まで以上の力を発揮してくれることは、悔しいけどありがたい」と複雑な親心をのぞかせた。

 川上は今後、トライアウト受験も視野に他球団からのオファーを待つ。「時間切れでアウトなら仕方ないです」。どこからも声がかからなかった場合は、最悪引退覚悟の胸中も明かした。現役野手最年長の44歳、山崎武司も、明日5日の最終戦で引退。かつての4番に続き、エースも最愛の竜に別れを告げる。だが背番号11は、再び敵としてナゴヤに帰って来ることを信じ、静かに消える。【松井清員】