<日本ハム3-4西武>◇6日◇札幌ドーム

 昨季パ・リーグ覇者の日本ハムは12年ぶり、北海道へ本拠地移転後は初の最下位で2013年シーズンを終えた。6日、西武との最終戦(札幌ドーム)も1点差で競り負け、64勝78敗2分け、借金を今季ワースト14として全日程を終了した。就任2年目でどん底を味わった栗山英樹監督(52)は、試合後のセレモニーでファンへ謝罪。「何が何でも優勝します」と来季の巻き返しを約束した。

 昨年は宙を舞った札幌ドームの真ん中で、栗山監督は深々と頭を下げた。「期待に応えることができなくて、本当にすいません」。悔しさと責任を背負い、目に映るファンの姿を焼き付けた。「あそこから(スタンドを)見ていて、本当に申し訳なかった。重く受け止めている。こんなシーズンにしちゃいけない」。苦しく、つらいシーズンを回顧し、ざんげを繰り返した。

 就任2年目。チームを熟知した福良ヘッドコーチという「参謀」を失った。そして、もう1人。今季のベンチには、栗山“新”監督の姿がなかった。「去年は何も知らずに突っ走れた。今年は違う。こうすれば、どうなるだとかが分かる。分かってしまう」。新人監督には、がむしゃらに指揮を執れる“武器”があった。今季は頭の中で下した決断に、自問自答してしまう。相談役、サポート役だった福良ヘッドの存在は大きかった。

 開幕からけが人も多く、低迷した。勝負の9月には、主砲中田翔内野手(24)も離脱した。チーム状態が悪ければ、少なからず不協和音も生まれる。うまく回らない歯車と、応援してくれる人たちへの申し訳なさ。苦悩し、孤独感にもさいなまれた。「おまえは友達でいてくれるよな?」。監督室を訪ねた、あるスタッフに漏らした。冗談のように取り繕ったが、胸に閉じこめていた本音が、にじんでいた。

 栗山町の自宅でも、大切な存在を失った。「あいつらには何でも言える」。監督就任前からのすべてを知る、10年来の付き合いだった相棒。連覇を目指し、キャンプインしたころ、飼っていた2匹の北海道犬の片方が体調を崩した。「桜の季節を迎えられるかどうか…」。重病だった。体力は落ち、苦しいはず。だが、そんなそぶりは見せず、凜(りん)とした姿で人生を全うした。「犬でも、最後までそうやって生きている。誇りって何かを考えさせられた」。自分も、ベンチで下を向かないと決めた。

 今生の別れから2日、大谷翔平投手(19)がプロ初登板を果たした。批判にさらされながらも、強い信念で続けてきた投打「二刀流」。そのひとつの節目だった。「翔平が投げる日だから、ゆっくり(試合を)見せてくれたのかな」。余命を告げられながらも初夏まで生きた愛犬と「成長させる責任がある」と話す大物ルーキー。運命の交錯は、たまたまとは思えなかった。大谷は77試合に出場し、3勝を挙げ、3本塁打を放った。誰もなし得たことがない挑戦を、やり遂げた。

 大谷だけではない。最終戦のスタメンには、陽岱鋼外野手(26)や西川遥輝内野手(21)、中島卓也内野手(22)ら成長著しい若手がいた。1点を追う8回無死一塁。サイクル安打がかかる西川に、送りバントのサインを出した。来季を見据えて、緊迫した展開の中での、ワンプレーに徹した。「最下位になった意味を考える。この状況をプラスにするしかない。絶対に優勝する」。勝負は、始まっている。長いオフは、必ずアドバンテージになる。【本間翼】