楽天田中将大投手(24)が、G倒を新たな名場面にする。28日、2年ぶり2度目となる「沢村賞」の受賞が発表された。今季24勝0敗で、28試合に登板した中で、田中が印象深い試合として挙げたのが9月26日の西武戦。ストッパーとして登板し、リーグ優勝を決めた試合だった。球団初優勝で、今後プロ野球の名場面として残される瞬間でもある。今年はまだ、日本シリーズで登板する可能性が残されている。日本一へ、名場面をもう1度作る。

 田中は無数のフラッシュを浴びながら、ほほ笑んだ。2回目の沢村賞受賞。感想を聞かれ、「うれしいです」とひと言。レンジャーズ・ダルビッシュとしのぎを削った11年とは違い、満場一致だった。レギュラーシーズン24勝0敗。自己最高の成績を収めても、誇れる数字は「ん~、特にないです」と淡々としていた。

 終始冷静だったが、少しヒートアップした瞬間があった。28試合の登板のうち、印象に残った試合について、「優勝した時って言えばいいんですかね」と笑った。理由は「あの場面が、テレビで流れるのを何度も見るので、印象に残ってます」。リーグ優勝を決めた9月26日の西武戦で、9回に限定ストッパーとして登板した。優勝を決めた瞬間、マウンドで両手を突き上げてガッツポーズした。

 「今までは空振り三振ばかり(テレビで)使われていたので。甲子園の。違ったところで、新しいページができて良かった」

 田中自身、よくテレビの映像で目にしてきたのは「打者田中」だった。これまでは、日本ハム斎藤との対戦がクローズアップされてきた。06年、高校3年の夏の甲子園。駒大苫小牧と早実の決勝戦再試合で敗れた。斎藤のガッツポーズの裏で、田中は空振り三振していた。今、正反対になった。西武戦で自分が最後の打者を空振り三振に打ち取り、こん身のガッツポーズをしている。新たな名場面が生まれた瞬間だった。

 田中物語が始まるのはこれから。沢村賞は「投手にとって一番、僕にとって、大事な大きな賞です」と言った。それでも、「自分がまだ戦っているので、もうそういう(沢村賞を発表する)時期になったというのが正直なところです」。数々の賞を受賞してきたが、いつもシーズンは終わっていた。今は、巨人と日本シリーズを戦っている。一番の目標はまだ先にある。

 次回登板は、Kスタ宮城で行われる11月2日の第6戦以降が予想される。リーグ優勝を決めた時のように、日本一を決める試合のマウンドに再び立てるかもしれない。「ここ(東京ドーム)で日本一を決めるのもそうですし、たとえ仙台に戻っても、本拠地で決めるぞという気持ちでチーム一丸で戦いたい」。始まったばかりの物語に新たな1ページを刻む。【斎藤庸裕】

 ◆06年夏の甲子園決勝

 エース田中の駒大苫小牧(南北海道)とエース斎藤の早実(西東京)が激突。8月20日は1-1で延長15回、引き分け再試合に。決勝の再試合は松山商(愛媛)-三沢(青森)以来37年ぶり2度目。翌21日は4-1と早実リードで迎えた9回表、駒大苫小牧が2ラン本塁打で1点差に追い上げた。2死無走者で最後の打者は田中。カウント2-2から斎藤が投じた外角への144キロ直球を田中が空振りし、早実は初優勝を決めた。田中は2日間で20回249球、斎藤は24回296球を投げる死闘だった。