<コナミ日本シリーズ2013:巨人6-5楽天>◇第4戦◇30日◇東京ドーム

 楽天星野仙一監督(66)は球場入りしてすぐ、川上哲治氏の訃報に接した。一瞬、言葉を失った。そして、つぶやいた。

 「日本一、見せられんかったな…」

 練習が始まると、ベンチに腰掛けた。腕組みをして「大往生だな」と言って、大きくため息をついた。重苦しい空気が流れた。だが、川上氏との思い出話を語り出すと、穏やかな顔になった。

 川上氏には、82年に現役を引退した後、NHK解説者時代にお世話になった。一緒に球場を巡ることも多く、食事やゴルフ、時にはマージャンをともにした。読書を勧められ、寺に座禅に連れて行かれたこともあった。運転手役として、送り迎えした時間は貴重だった。「(車中に)生き字引がいるんだぞ。盗まなきゃ、損じゃないか」。ほとんどが野球の話だった。「両雄並び立たずと言われるけど、ONを並び立たせたこととかね。でも、川上さんは謙虚で、(コーチだった)牧野さんや藤田さんがいたからと言っていたよ」。

 監督としての背番号は、川上氏と同じ「77」を選んだ。9月にリーグ優勝した後、手紙をもらったという。「お祝い、というか。『最後までしっかりやれよ』と」。学んだことは、監督16年目の今でも生きている。勝負に徹する厳しさで有名だった川上氏だが、星野監督は「人間は、付き合ってみないと分からない。情の厚い人だったよ。ただし、勝負には非情を出す。そういうところを学んだな。勝負に対して、すごく厳しかった。野球に対する集中力はすごかった。それだけ、人生をかけていた」と言った。この日、星野監督を始め、楽天ナインも左肩に喪章をつけて戦った。なんとしても、日本一を報告する。【古川真弥】