阪神の安芸秋季キャンプが1日に始まり、新加入したトーマス・オマリー打撃コーチ補佐(52)がいきなり熱血指導だ。「代打の切り札」として君臨した桧山進次郎氏(44)が現役引退。この日のオマリー打撃コーチ補佐のターゲットは、後継者として期待される未完の大砲・森田一成内野手(24)。伸び悩むスラッガーに手を差し伸べた。掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(58)も夜にキャンプ地高知入り。得点力不足に泣いた虎が、この秋、生まれ変わる。

 いても立ってもいられなかった。昼下がりの安芸。オマリー打撃コーチ補佐は打撃練習を終えた森田のもとに歩み寄り、身ぶり手ぶりの指導を始めた。現役時代さながらの柔らかい打撃動作も披露。テークバックの取り方などを伝え、会話の輪が解けたときだ。「3ワリ、オネガイシマス!」と笑顔で言う。来季7年目を迎える若き長距離砲に期待たっぷりのエールだ。

 背番号80のタテジマに袖を通すと血が騒いだ。打撃練習が始まる午後が本番だった。日が傾き始めた午後5時前まで4時間近く、グラウンドに立ち続けた。話し始めたら止まらない。和田監督、関川打撃コーチ、果てには隣にいる大木通訳の両腕をつかんで、身ぶりを交えた打撃談議を展開。超熱血のマシンガントークだ。若手の動きに目を光らせるなかでも、森田には何度も親身にレッスン。右半身が開きすぎるオーバーアクションを繰り返した。

 オマリー氏

 上半身の使い方が上手じゃない。シンプルにね。上半身が動きすぎると球に対して遅れてしまう。トップを作る前に左肩を入れすぎて打ちに行って、右肩が開きすぎている。いいパワーを持っているんだから、悪い癖を直せば、いい成績を残せるはず。

 森田指導は打撃コーチ陣が依頼したもの。関川打撃コーチは「冗談だけど『体形が一緒なんだから、技術も同じになれ』ということだよ」と笑う。ただのジョークではない。オマリー氏は森田と同じ左打ちで身長185センチ。阪神で活躍した91年から94年まで体重89キロ。巨体だったが、抜群のバットさばきやミート力で在籍4年間すべて、打率3割超。93年には首位打者を獲得。森田は96キロと上回るが「巨漢の打ち方」は参考になる点もあるだろう。

 和田監督とも以心伝心の関係だ。92年にはともに主力としてV争いを演じた。優勝した03年は指揮官が打撃コーチでオマリー氏が特命コーチ。和田監督は「ティー打撃のトスのあげ方でも何種類も持っている」と打撃理論に共感。この日「桧山が抜けて、左の代打のポジションが空いている。森田とか候補がいる」とも言った。代打の切り札だった桧山氏が引退。盟友に新たな「神様」を育てる役回りを託した。

 森田は今季、1軍で13試合に出場し、打率2割1分1厘にとどまった。だが、2軍ウエスタン・リーグでは16本塁打を量産し、本塁打王に輝いた。オマリー氏の教えに「基本的なことです。あらためてというところ、ですね」と気を引き締める。眠れる巨砲が目覚めるか。10年ぶりの現場復帰。かつて何度も敵をなぎ倒したオマリー氏の手腕に乞うご期待だ。【酒井俊作】