封印ワード?

 解禁が、佑ちゃん復活への自信の証しだ。日本ハム選手が27日、道内各地でイベントに参加。斎藤佑樹投手(25)は応援大使を務める滝川市内の小学校などを訪問した。市民対象のトークショーでは高校、プロと永遠のライバル楽天田中将大投手(25)の愛称「マー君」と公の場で、極めて珍しく口にした。来季への自信がにじむようなサプライズ発言。右肩関節唇損傷に苦闘した今季から、再起の予感が漂ってきた。

 佑ちゃんから、あの名前が飛び出した。「この流れでしょ?

 マー君」。かつて、斎藤と甲子園の注目を分け合った盟友の愛称を、公の場で発した。滝川応援大使を務める乾真大投手(24)とのトークショー。お互いの呼び方を聞かれた時だった。楽天田中と同じ「マサヒロ」の名前を持つチームメートにかけ、ジョークをかました。予想外のリップサービスに会場は大盛り上がり。同市関係者は「男の友情ですね」と感傷に浸った。520人の市民が興奮したフレーズを明るく口にできたことが、事態好転の吉兆のようだった。

 佑ちゃんとマー君。高校時代に沸かせた斎藤、田中の親しみやすいニックネームだった。06年、全日本高校選抜での初練習。意識しながらも、お互いの呼び方を初々しく明かしていた。あれから7年。2人は大学、プロと道は分かれ、また交わった。周囲の過剰反応もあり、表だっては互いに呼び合うことは封印していた。置かれている立場は今季、さらに明確に。田中は開幕24連勝を達成し、チームを日本一へと導いた。対照的に、斎藤は右肩関節唇損傷に苦しみ、1軍登板は1度だけ。さらに距離は広がっていた。

 精神的に、長いトンネルから抜けた証明のようだった。苦悩の連続だった今季。選手生命も左右する大ケガと向き合い続けた。田中と同じように、いつかマウンドに返り咲く日に向けて、ひっそり汗を流してきた。10月2日オリックス戦で復帰登板を果たすまでに回復。来季は斎藤自身が「勝負の年」と位置づける。「具体的な目標は、あえて言いたくない。今年のオフから来年のキャンプ、自信あります」。プロ4年目の来季へ、揺るぎない決意と自信がある。だからこそ、また人前で「マー君」と声を上げることができたのかもしれない。

 この日はフレッシュなパワーを注入し、さらなる活力も得た。滝川第二小学校を訪問し、470人の児童とも交流。質問コーナーではプロになるための練習内容を聞かれ、栗山英樹監督(52)の言葉を引用しながら分かりやすく回答した。「野球も自転車と一緒。コツコツ失敗を繰り返していけば、絶対になれる」。まるで自らに言い聞かせるようにハッキリ言った。いつものしかかる「マー君」発言が、重かった心の扉を解放した証しと信じたい。佑ちゃんは順風満帆に、再飛躍へ向けてのオフを過ごしている。【田中彩友美】

 ◆佑ちゃん&マー君

 06年夏の甲子園決勝と同再試合で投げ合った早実・斎藤、駒大苫小牧・田中は大会後、そろって全日本高校選抜メンバー入り。米国遠征前の合宿中の共同インタビューで初共演した際、お互いの呼び名を問われると、斎藤は「マー君です」、田中は「佑ちゃんです」と答え、息の合った掛け合いを続けた。照れはないかとの問いには、斎藤は「もちろんあります」、田中は「違和感ありません」と回答。呼び名の由来について、斎藤は「苫小牧の本間君(当時の全日本メンバー)がそう呼んでいて。マネしてみました」と言い、田中は「小さいころ、近所の人たちに呼ばれていたので違和感ありません」と、フレンドリーな関係を強調した。