呉昇桓よ、球界の常識を変えろ!

 阪神中村勝広GM(64)が新守護神にエールを送った。4日、ソウル市内のホテルで催された契約調印式に出席し、門出を祝った。呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=サムスン)が複数イニング&連投を歓迎する姿勢を示し、中村GMも「日本球界の常識を覆してくれそう」と期待たっぷり。身を粉にして力投する鉄腕は、優勝請負人になるべく奮闘する。

 常識破りの1年になるかもしれない。そんな予感すら漂う、呉昇桓の頼もしい発言だった。「抑えは米国や日本では1イニングという考えです。自分は何イニング投げてもいい。抑えることが一番大事。5イニングまで投げたこともある。抑え投手はチームに必要なときに抑えるだけ。1週間6試合すべてに投げるつもりで準備します」。壇上の隣で聞いていた中村GMも思わず頬を緩めた。

 阪神の一員になったばかりだが、早くも責任感の強さが表れていた。中村GMは「日本球界の常識を覆してくれそうな感じがする」と声をはずませる。阪神では、かつて不動の守護神だった藤川球児(現カブス)が07年にセ・リーグタイ記録の10連投をこなしたがレアケースだ。イニングまたぎ&連投は「肩は消耗品」という考えが定着している日本球界では、極力避けられているが、呉昇桓は気にするそぶりも見せない。

 鉄腕ぶりはベンチワークにも好影響をもたらすだろう。前日3日も中村GMは「イニングまたぎを当たり前のようにやっている。ベンチもありがたいだろう」と話していた。基本的には9回に起用されるが、呉昇桓は前倒しの投入が可能になる。今季は7、8回の継投に苦心した。スーパー守護神を早くつぎ込めるなら、これほど心強いことはないだろう。

 今秋の韓国シリーズでは救援登板した際、5イニング目に突入する奮闘。リリーフエースは献身的にチームの勝利を目指してきた。中村GMは調印式の冒頭で「呉昇桓投手に日本で遺憾なく力を発揮していただいて、大車輪の活躍、阪神のリーグ優勝、そして日本シリーズのステージに上がる原動力になってほしい」とあいさつ。まさに優勝を導く抑えこそ理想の姿だ。

 10日に来日し、13日に大阪市内のホテルで入団発表が行われる。日増しに「阪神呉昇桓」への期待が高まる。中村GMは言う。「(阪神は)球団創設78年の歴史を持つ。韓国球団から入団を招いたのは呉昇桓選手が初めてという記念すべき日を迎え、私自身、いま、大きな感動を覚えています」。球団史に刻み込まれた補強は、鉄腕の奮闘で輝きを増す。

 ▼連続試合登板のセ・リーグ最長は10試合で、4人いる。うち虎投が3人おり75年山本和行、07年藤川球児、08年アッチソン、ほかに83年久保文雄(大洋)。2リーグ分立後のプロ野球最長は72年佐藤道郎(南海)の11試合。また連続試合セーブの日本記録は佐々木主浩(横浜)が98年に記録した22試合。阪神最長は08年藤川11試合で、開幕戦の3月28日横浜戦から記録。