プロ野球の臨時オーナー会議が26日、都内ホテルで開かれ、元東京地検特捜部長で現コミッショナー顧問の熊崎勝彦氏(71)が新コミッショナーに就任することを全会一致で承認した。任期は来年1月1日から2年間。熊崎氏は、統一球問題でファンの信頼を失った日本野球機構(NPB)の組織改革に取り組む決意を示し、統一球に自身の名前を入れる考えがないことを明言した。

 前任者を“反面教師”にして、球界を変える。熊崎氏は、加藤前コミッショナーが自身の名前を入れていた統一球について「それは良いことだと思うが、私の性には合わない」と、来季から刻印が消えることを予告した。さらに、加藤氏が週1度程度しか事務局に顔を出さないことを批判された勤務スケジュールにも言及した。常勤でないのは熊崎氏も同じで、都内に自身の法律事務所を構えているが「(法律)事務所は継続しつつ、できる限り(NPB)事務局に顔を出すつもりですよ」と意欲を見せた。

 検事時代には「落としの熊崎」の異名を持つ、東京地検特捜部で活躍した。「私は特捜の『進むも地獄、退くも地獄』のような環境で働いてきた。古希を過ぎ(重責は)もう十分だなと思ってたけど、これも運命」と覚悟を決めた。一見、こわもてだが「性格的には明るい」と自己分析する。08年にはテレビ朝日の新春時代劇に自ら売り込んで出演。長ぜりふを難なくこなしてプロデューサーを驚かせたこともある。

 会見では、法律家らしい決意も語った。熊崎氏は「野球協約のもと、コミッショナーには、さまざまな課題に対して指令、裁決、裁定するという重要な職務がある。その1つ1つに、まさに公正公平に対処していく」と言葉に力を込めた。【広瀬雷太】

 ◆熊崎勝彦(くまざき・かつひこ)1942年(昭17)1月24日、岐阜県生まれ。72年検事任官。96年東京地検特捜部長。99年最高検察庁検事、04年同公安部長。同年9月の退官まで「落としの熊崎」の異名で、リクルート事件、金丸信自民党副総裁(当時)の巨額脱税事件、ゼネコン汚職事件などに携わった。04年10月から弁護士として活動し、07年関西テレビの「あるある大事典」番組捏造(ねつぞう)問題などを担当した。05年からプロ野球のコンプライアンス(法令順守)担当のコミッショナー顧問として暴排問題などに取り組む。