元巨人、ヤンキースの松井秀喜氏(39)が、臨時コーチを務める巨人の春季キャンプを「ミスター流」で指導する。4日、地元石川・能美市で「松井秀喜旗争奪第9回学童野球大会」の表彰イベントに参加後、取材に応じた。日本球界から10年以上、遠ざかり、現役選手の情報は少ない。だが先入観は持たずに、恩師である巨人長嶋終身名誉監督のように感じるままに指導する考えだ。

 松井氏の頭の中は、真っ白なキャンバスのようだった。来月には臨時コーチとして巨人での初指導が待つが、メジャー移籍から10年以上がたち、古巣の現役選手の情報が少ない。その状況に先入観を持たずに指導していくかと聞かれ「本当にそう。行ってそのまま、感じるままですね」と答えた。

 感覚を大事にする。長嶋終身名誉監督が指導する上で大事にしてきた部分でもある。松井氏に素振りで指導する時もスイング音を聞いて、状態を見極めていた。松井氏は坂本、長野と現在の巨人を代表する打者についても「名前は聞いていても、プレーはニュースで見る程度。試合で見てみないと分からない。練習だけじゃ限界がある。宮崎に行ってみないと分からない」と慎重だ。必要以上に情報収集を行って固定観念を持つよりも、生で見て、肌で感じる感覚を基に指導していく考えだ。

 まだ指導者経験のない松井氏に対して、星稜高時代の恩師、山下智茂名誉監督から金言を授けられた。「背中で引っ張れ。実績があるから選手はついていくし、ひと言ひと言に重みがあるから思い切ってやってほしい」「指導者になったら(リーダーに)なるだけの本を読まないといけない」「常に美しく。自分を磨くことを忘れるな」。この日夜に行われた同校野球部OB会新年会で昨年8月の甲子園以来の再会を果たした。毎年恒例だった書籍プレゼントはなかったが、旧交を温めた。

 松井氏は2年ぶりの地元帰省で温泉に出掛けるなどリラックス。不動心で初指導の時を待つ。【広重竜太郎】