虎のバレンティンになる!

 阪神のドラフト3位陽川尚将内野手(22=東農大)が5日、高槻市内の母校・金光大阪の野球部グラウンドで自主トレを公開し、キャッチボールやマシン打撃で汗を流した。背番号「55」を背負う未来の主砲候補は、バットを約1センチ伸ばし、ホームラン量産体制を整えている。

 寒空の下、新調したバットの感触を確かめた。トスを上げてもらい、ネットに向かって黙々と打ち込んだ。ケージに入ると、ベースから離れてどこまでバットが届くのか確認しながら1球1球打っていった。

 「これまで使っていたものから0・5~1センチ伸ばしました。(遠心力を使って)飛ばすため。本塁打を打てるようになりたい」

 プロではさらなる1発を求めて、長さ86センチのバットを相棒にした。陽川はこれまで85センチのバットを使用し、大学通算24本塁打をマーク。東都大学リーグ入れ替え戦では、神宮球場の左翼スタンドへライナー性の一弾を放つパワーの持ち主だ。この長打力を生かすため、1センチをプラスした。

 昨季、シーズン本塁打新記録を更新し、60本塁打を放ったヤクルトバレンティンも同じ86センチのバットを愛用していた。打率も3割3分をマークし、リーグ2位。メジャー時代に使用していたメーカーに変更し、新たなバットで長打力と確実性を発揮した。

 学問からも徹底的に追求した。陽川は国際食料情報学部国際バイオビジネス学科に所属し、バットを卒業論文の題材にした。「折れたバットの利用法やどんな材木が折れやすいのかなどを調べます」と研究。このオフは頭も体もバットのことでいっぱいだった。

 2日に大阪市内の住吉大社で引いたおみくじは大吉。幸先の良いスタートだ。「目標は開幕1軍。自分をアピールしていきたい」。新たな相棒とともに、大暴れする。【宮崎えり子】<長バットを使った強打者>

 ◆藤村富美男(阪神)初代ミスタータイガース。本塁打量産を目指して37インチ(約94センチ)のバットを使い、ファンに「物干しざお」と親しまれた。

 ◆清原和博(西武、巨人、オリックス)開幕戦前夜は抱いて寝るほどバットを重視。34.5インチ(約88センチ)のバットで525本塁打。

 ◆タイロン・ウッズ(横浜、中日)35インチ(約89センチ)のバットで特大アーチを連発。「ミスター場外」と異名を取った。03、04、06年セ本塁打王。

 ◆フリオ・フランコ(ロッテ)頭の上で35.5インチ(約90センチ)のバットを構えた。95年打率3割6厘でリーグ3位。