プロ野球12球団は、今日2月1日にキャンプインする。宮崎入りした巨人は松井秀喜氏(39)を13日までの臨時コーチとして招き、日本一奪還への道のりを歩み出す。原辰徳監督(55)は、松井氏に遠慮なしの全力指導を要求。2軍スタートの大田泰示外野手(23)宮国椋丞投手(21)を筆頭に、チーム力向上に欠かせない若武者の底上げを託す。

 原監督が、臨時コーチを戦いの輪に引き入れた。宮崎空港での歓迎セレモニー。後列右側で穏やかな顔だった松井コーチに、原監督が「松井秀喜が12年ぶりに宮崎の地にやってきました。宮崎キャンプで我々と同じく選手の指導を行います。ではひと言、あいさつを」と突然、振った。

 えっ…。目を見開いて一瞬、驚いて、でも落ち着き払って松井コーチは言った。「宮崎の風と太陽を浴びながら、選手としっかり日々を過ごしたいと思っています。よろしくお願いします。失礼しました」。大きな拍手で終わったセレモニーは、単なる“むちゃ振り”じゃなかった。

 原監督は心底、松井コーチに期待している。宮崎神宮での参拝を終えると「臨時コーチとはいえ、同じ釜の飯を食う。世界で戦って、通用したメンタルと技術を注入してくれればいいと思っている」と加えた。宮崎入りする前には「一切、遠慮する必要はない」とお願いした。「臨時」の肩書がある上に、周囲に気を配る人柄を熟知していた。遠慮というリミッターを外し「2軍に、大田と宮国という選手がいる。どんどん2軍に足を運んで、見てやってほしい」と頼んだ。

 後継と目された大型野手に、昨季開幕投手を務めるも6勝の右腕。将来の巨人軍を引っ張ってもらわなくては困る若武者の名前を挙げた。一見、関係ない2人に思えても原監督の見方は違った。彼らの共通項である「優しさ」が、勝負の世界で足かせになるとみていた。大田は投手に懐を起こされるから、外角球に手を焼く。宮国は打者の懐を起こせず、踏み込まれてしまう。性格を含めた特徴を伝え、心身の強化を託した。

 打席に立って「内角を突け」と宮国に要求する。厳しい内角に投げ、大田が打ち返す。この緊張を乗り越えれば財産になると踏んでいる。大田は「5分でもいい。直接会う機会があれば、ヒントがある気がする」と言い、宮国は「緊張すると思うけど、しっかり投げてフォームを固めたい」と言った。くすぶっている自分を変える。千載一遇のチャンスととらえている。

 ゴジラのふるさと宮崎で、すべてを還元してもらう。第2クールをメドに、1、2軍全選手を集めての講話も予定している。宮崎初日を終え「20歳前後のころは、ちょっとしたことがすごいヒントになって、成長のきっかけになった。若い選手、特にこれからレギュラーを奪っていく選手に何かを伝えていけたら」と指針を明かした。修羅場をくぐり抜けてきた力を借りて。濃密な13日間から日本一奪還の道のりが始まる。【宮下敬至】