日本ハム斎藤佑樹投手(25)の奇跡のカムバックが、現実味を増してきた。27日、韓国・LG戦(名護)で今キャンプ4度目の実戦登板。3番手で6回から3回を1安打無失点と好投した。2者連続三振を奪うなど好内容で、沖縄での実戦調整を終了。右肩関節唇損傷からの復活を目指す正念場を、手応え十分に乗り切った。2年ぶりの開幕ローテーション入りへ、また大きく前進した。

 確かな足跡を刻んだ。斎藤は痛快に、南国での最後のマウンドを終えた。予定されていた3イニング目の8回1死からの右の2打者を料理した計13球に、収穫があった。ともに初球で見逃し、空振りでストライクを奪って優位に立ち、勝負を進めた。決め球が際だった。1人目は外角低め139キロ直球で見逃し、2人目は外角カットボールで仕留めた。やや縦変化する軌道で、空振りを誘った。2者連続三振で、決意に満ちて突入したキャンプでの実戦を締めた。

 すがすがしい笑みをたたえ、総括した。「(故障していた)昨年と比べたら全然、違う。昨年と比べても意味がないんですけれど」。投手の致命傷になりかねない、右肩関節唇損傷から復活できるかどうか。疑心暗鬼の周囲の目にさらされながら、実戦4試合を投げ抜いた。「いいスタートが切れた」。今キャンプで計9回を2失点。この日は今季自己最速145キロもマークした。刻んだ数字が取り戻した明るさの裏付けだ。

 試行錯誤しながら戦闘スタイルを固めていった。象徴的なのはキャンプ中盤からブルペン投球などで、取り入れた1つのルーティン。二塁けん制の練習をしながら直球、スライダー、カットボールを投げ込んだ。けん制の動作時に体の動き、シンクロして腕の振りの感覚が良いことを発見。「ちょっといいんですよ、これが」と、独自で編み出した修正法だった。この日も1イニング目の6回に2四球と乱れたが、7回までのイニング間に行って矯正。快投の伏線にした。

 数々の創意工夫でモデルチェンジへ挑み、一区切りをつけた。「力んで投げなくて、軽く腕を振ってもボールっていくんですよね」。意識も完全に切り替わった。前回登板20日ロッテ戦は蓄積疲労から「低めが伸びてこない」と悩んだが、コンディショニングを整えた最終登板で躍動した。栗山監督が「佑樹の持っているモノはまだまだ高い」と注文をつけたのも、戦力になるとの確信の表れ。斎藤は、よどみない口調で今の自分を語った。

 斎藤

 打者との対戦で主導権を持てているんですよね。あと根拠を持ってやれているんですよね。打たれても、抑えても…。

 生まれ変わろうとしている斎藤は、かつての解明できないような強運などだけではない。自信、手応え、信念、執念…。手探りではなく、いろいろな実感あるものを「持っている」球春を迎えている。【高山通史】