<西武5-2楽天>◇29日◇西武ドーム

 ついに、1発が飛び出した。楽天ケビン・ユーキリス内野手(35)が開幕2戦目で西武菊池から来日初本塁打を放った。本塁打なしに終わったオープン戦では28打席無安打もあったが、公式戦に入り元メジャーの実力を発揮。11年以来3年ぶりの開幕2連勝に貢献した。

 ユーキリスはゆっくりと歩を進めた。1点リードの6回無死。カウント2-2から菊池の外角直球を完璧に捉えた。5秒間の滞空時間を経て左翼席までの放物線を描いた。開幕2戦目での来日1号に「長いシーズン、ホームランはどこかで出る。他の打席の内容は納得していない」と、不満顔で淡々と話した。

 オープン戦は不振を極めた。28打席無安打を含む打率1割5分8厘。だが、周囲の雑音など気にもとめず「オープン戦で3冠王や本塁打王を取った選手が活躍するかと言われたら、NOだと認識している」と平然と言ってのけた。

 不振でも、スタイルを貫いてきた。早出練習ではティー打撃でスポンジボールを打ち、打撃の間をつかむ練習を繰り返す。ウオーミングアップでは集団から離れ、1人で四股のような動作を一心不乱に行う。グリップを持つ左手と右手を大きく離すのは、世界中の野球ファンが知るところ。メジャー通算150本塁打の大物は、何もかもが独創性にあふれている。球団も特例でひげを認めた。外見が目立つが、内面は真っすぐだ。「1打席、1打席ずつ上達したい。うまい選手になりたい。毎日成長したいんだ」。

 信念がある。開幕前に被災地を訪れた時のこと。「プロ野球選手はエンターテイナーだ。1つでも多くの勝利を届けることは、笑顔を届けることと同じなんだ」。東北でプレーする意味を問われ、じっくり考えて答えた。来日前から児童支援を中心に慈善活動を展開。子どもたちと積極的に交流し、自殺防止などの社会問題にも取り組んできた。

 球場を離れる際には「力を尽くしてチームに貢献する」とシンプルな言葉を残した。誰かのためにが原動力。スターは謙虚で魅力的だ。【島根純】