<巨人3-5阪神>◇29日◇東京ドーム

 巨人は状況判断ミスが重なり今季初黒星を喫した。同点の9回無死一塁、4番手マシソンの野選などで無死満塁。阪神西岡の一塁ゴロをロペスが捕球し、素早くベースを踏んで打者をアウトとし本塁送球。阿部慎之助捕手(35)はタッチプレーをせずに再びロペスに返球したことで、あっけなく決勝ホームを明け渡した。ジャッジメントが勝負を分け、虎とのしのぎ合いに屈した。

 阿部は、本塁に突っ込んできた阪神上本に、タッチするだけでよかった。同点の9回無死満塁。西岡が放った一塁線へのゴロを巡るプレーが勝負を分けた。

 ゴールデングラブ賞の一塁手ロペスは、最高の状況判断をした。捕球し、迷いなくベースを踏み、素早く反時計回りにターンし、強肩で本塁へ投げ、阿部に託した。約3メートル前にいる上本にタッチすれば、ダブルプレーが完成する状況になった。しかし阿部は再びロペスにボールを戻し、生還を許した。「確認できなかった。ベース(を踏む動き)も見えなかった。申し訳ない。こういうことがないように気をつけたい」と神妙すぎる顔で話した。

 打者走者の西岡とロペスの動きがかぶり、確認は難しかった。阿部は「『それ』しか考えていなかった」と言った。「それ」とは「一-捕-一」の併殺を指していた。局面から目が切れたことで思い込みが起こり、決勝点に直結した。声で指示する方法もあるように思えるが、ロペスは「練習なら聞こえるが。4万5000人の大歓声では難しい」と強く反論した。

 年に1度あるかないかの痛恨プレーに至る過程にも、ほころびがあった。9回無死一塁、鳥谷が初球にバントをした。投手マシソンは虚をつかれた格好となり、チャージが一瞬遅れた。二塁送球もオールセーフの野選で、傷を広げた。東京ドームの人工芝が新しくなり、打球の勢いに変化が生まれていた。「くせ者」の阪神高代コーチは、開幕前から何度も転がりをチェックしていた。自分の庭で足をすくわれた。

 9回裏、失意の阿部は先頭打者だった。新守護神の呉昇桓を見極めたい状況で初球を強振し、三飛に倒れた。原監督は宣言した。「犯してはいけない。ジャイアンツでは2度と同じことが起こらないようにする」。状況判断で勝負を決める将棋の世界は、1手誤れば勝ちが遠のき、2手誤ればまず確実に負ける。野球も同じ。グラウンドは、瞬時に下す正しいプロの状況判断を、ファンに見てもらう場でもある。監督の強い言葉は「ファンに申し訳ない」の言葉に置き換えられる。【宮下敬至】