<西武1-7楽天>◇30日◇西武ドーム

 マー君がいなくても勝てる。楽天が西武に13安打7得点と大勝し、09年以来の開幕3連勝。星野仙一監督(67)の投手起用や継投のタイミングがピタリとはまり、3試合すべてで先発投手に白星がついた。昨季24勝無敗の田中(ヤンキース)が抜け、痛手となるはずが、むしろ星野監督は若手成長のチャンスと前向きに捉えていた。

 3日連続で儀式が待っていた。選手と勝利のハイタッチだ。星野監督は「考えられないな。しかも敵地で」とつぶやいた。開幕3連勝は、楽天就任4年目で初。しかも、優勝した昨季でも9勝13敗2分けとリーグで唯一負け越した西武相手にやってのけた。

 継投にスキがなかった。6回1死、辛島が4番浅村にソロを打たれ初失点すると、迷わず交代。まだリードは2点あったが、序盤から制球が不安定でスパッと諦めた。傷口を最少で防ぐと、その直後に突き離した。試合前「そりゃ、気は楽。でも、抜いたら終わりだ」と言ったとおり、貪欲に3つ目の勝ちを拾った。同時に、3試合全て先発の成長を促す采配を振った。

 【第1戦は英才教育采配】則本が1点リードの8回2死二、三塁で浅村を迎えたが、敬遠させなかった。「俺が面白くない。みんな則本がエースと言うが、まだまだ。田中が、あそこで逃げるか?

 逃げない」。次のエース候補に自力でピンチを脱出させ、1失点、133球完投を引き出した。

 【第2戦は温情采配】8回90球で塩見を代えた。「完投させてもよかったが、勝ちがついたのが一番」と、2年ぶり1軍登板の塩見に白星を与えることを最優先。自信回復の機会とした。

 そして、この日は厳格采配だ。辛島を「0・5勝。投げ込み不足だ」と突き放した。それぞれの立場に応じた手を打った。田中が抜けた以上、若い先発陣の台頭が欠かせない。勝利が第一義でも、将来の戦力構想まで見据えた判断だった。

 開幕前には「田中の穴なんて埋まらん。金子(オリックス)が来ても、摂津(ソフトバンク)が来ても。でも、何とかしようというみんなの思い、俺の思いがある。次の田中をつくる。それが俺のモチベーションだ」と宣言した。自ら「有事の星野」と言ってはばからない。絶対エース不在は、とんでもない有事。逆境こそ、連覇へ突き進む最高のエネルギーとなっている。【古川真弥】