巨人が本拠地の芝とともに生きる。東京ドームでの阪神との開幕3連戦はプロ野球新記録の計47安打と豪快な野球を見せつけた。一方で開幕直前に導入された新人工芝への対応とも戦っていた。繊細な感覚に、潜入する。
天然芝を思わせる鮮やかな緑の人工芝の上をボールが転がる。変わらない風景だが、選手の中には経験則からのイメージと溝があった。開幕戦の3回2死一、二塁。阿部が三遊間へ運ぶ。「レフト前へ抜ける」と思った打球は飛び込んだ鳥谷のグラブに収まった。昨季までなら適時打が生まれていた可能性が高かった。
東京ドームは3月中旬に7年ぶりに人工芝を張り替えた。フィールドターフの進化型は芝の葉の厚さが30%増した。マイクロメートルという1000分の1ミリの世界での話だが、クッション性が高まって肉体疲労は軽減されるとみられる。だが球足が遅くなり、選手から感覚的に戸惑いの声が聞かれる。
開幕戦翌日。阿部は芝の奥の敷き詰められたチップをほじくり返していた。「芝が深く感じる。チップもこれだけあると打球が死ぬよね」と振り返った。ロペスは「ボールが動きまくる。時に蛇のように曲がったり、時にはゆっくりになる」と言う。直接の要因としては否定するが、3戦2失策。守備の名手も神経を払っている。開幕戦でフェンスのクッションボールを処理し、福留の二進を刺したライト長野も「跳ね返ってこなくて、待ち受けてしまった。もっと詰めないと」と話した。
感覚の調整を行う。強肩のセンター橋本は定位置から本塁へのワンバウンド送球で目安を変えた。「本塁側のマウンドの切れ目に投げていたのを、マウンドと本塁の間に投げるようにした」。約4メートルの調整でワンバウンド送球を維持する。
スタイルへの意識も強まる。30日阪神戦で12個の内野ゴロを重ねた大竹は「ゴロも勢いが死ぬ。僕はゴロを打たせるスタイルなので生かさない手はない」と実感した。俊足の松本哲は「攻撃ではセーフティーバントも狙える。ボテボテでも去年より球足が弱まる」と狙いを明確にした。
人工芝も生き物だ。5、6日と歌手福山雅治のライブがある。重い機材や多くの人がグラウンドに入り、芝が踏みしめられ、硬さが増すとみられる。硬さを求める阿部は「いっぱい踏んでほしい」と笑う。豪快な巨人は繊細な感覚も武器にして戦う。【広重竜太郎】



