<阪神4-3DeNA>◇9日◇甲子園

 こりゃ本物や。阪神のドラフト6位岩崎優投手(21)が、投壊に悩むチームに、またも光を差し込んだ。DeNA戦に先発して7回1失点。自身に勝ち星はつかなかったが、虎の甲子園初白星に大きく貢献。防御率0・75は、堂々のセ・リーグ2位だ。

 チームの勝利が何よりうれしかった。自身に勝ち星がつかなくても、岩崎は会心の笑顔だった。デビューから2連勝なら虎の新人では2リーグ制後初めてだったが、その快挙は逃した。それでも、7回1失点。勝利の立役者は、紛れもなくドラ6左腕だった。

 「1イニング、1イニングという気持ちで投げた。今日はめいっぱい投げました。自分が投げた試合で、チームが勝ったのがよかったです」

 2度目のマウンドでプロの洗礼を受けた。1点リードの4回1死走者なし。「一番得意なところに投げてしまった。コントロールミス」。前日、藤浪に逆転満塁弾を浴びせたブランコに左中間へ豪快にソロアーチを運ばれた。1球の失投が命取りになるプロの世界を痛感。初登板から9イニング目にして初失点。動揺がないはずがない。直後の多村には右前安打された。だが、最大の正念場で生命線の制球力は崩れなかった。後続を断ち切り、最少失点で乗り切った。

 直球はこの日の最速が137キロだったように、130キロ台だ。身長は184センチあるが、上から投げ下ろすタイプでもない。決して速くも、角度もない真っすぐで、空振りを取る。DeNAの打者がタイミングを取りづらそうな場面もしばしば。球速表示と打席での体感速度の誤差がある。「球持ちの良さはもともと彼が生まれもったもの。ベース付近の球の威力があった」と、恩師で清水東元監督の羽根田暢尚(のぶひさ)さんが話すように球持ちの良さを武器にプロの舞台に飛び込み、存分に暴れ回っている。

 球をリリースする極限のポイントまで粘れることで制球力を磨き、四球は2試合12回で2つしかない。コースを丁寧に突いて、6三振を奪った。防御率は0・75とセ・リーグ2位。まだ2試合とはいえ、広島前田、ヤクルト小川ら他球団のエース陣すら上回っている。中西投手コーチも「十分。7回1失点だから。次につながるだろう」と評価した。ドラ6サウスポーが、12球団ワーストのチーム防御率6・63の投壊を救ってみせる。【宮崎えり子】