<広島8-2阪神>◇17日◇マツダスタジアム

 追い越すつもりが連敗で、首位広島と2ゲーム差、3位に転落してもうた。あれだけ猛威を振るった打線が急停止?

 いいや、この男に待望の1発が出たやないか。4番マウロ・ゴメス内野手(29)の開幕18試合、78打席目の来日1号がバックスクリーンに飛び込んだ。セ・リーグ5球団との対戦を終えて10勝8敗。セカンド・ダッシュの勢いはゴメスがつける。

 小雨を切り裂き、低空ライナーが一直線でバックスクリーンへと突き進む。グングンと伸びてオーバーフェンス。ゴメスが、ようやく来日初アーチを放った。4点を追う4回1死。広島バリントンの初球に襲いかかった。外角低め直球を完璧にとらえ、自慢の怪力で運び去った。新助っ人も心のつかえが取れた。

 「1本ホームランが出てホッとしているけど、負けてしまったからね。いずれはホームランが出ると思っていたから意識はしていなかった。好球が来ればしっかり強く振るだけだよ」

 周囲を安心させる一撃だった。これまで安打を連ねても、大きい当たりが出ていなかった。開幕から78打席目で1号。和田豊監督(51)は「本人は出ないのを気にしていた。これでスッキリしていける」と心境を代弁した。9回にも中前打。開幕から18試合連続出塁に伸ばし、91年オマリーの19試合にも届く勢いだ。

 長距離砲のプライドがにじむ。アーチが出ないもどかしさを振り払うべく、工夫する。この日は使用バットを変更。福留から借りて試合に臨んでいた。「フィール・グッドさ。持った感じが良かった。違うバットも試そうと思ったんだ」。ルーティンを変更して、快打につながった。

 ゴメスの左腕には「守り神」が宿る。4日からのヤクルト3連戦(神宮)で、エボシールド製の黒いリストストラップが届いた。マートンを通じてリクエストしたものだ。担当者は「手首を固定することでパワーが出やすい感覚になると選手は言っています。米国ではつけると調子が良くなる言い伝えもあります」と説明。米大リーグ最強打者のミゲル・カブレラ(タイガース)やロンゴリア(レイズ)ら名だたるスラッガーが愛用するアイテムも、助っ人の心の支えだ。

 首位広島に完敗したが、大砲の1発はチームにとって大きな収穫だろう。ゴメスは言う。「体の調子は悪くないし、いい感じで打席に入れている。明日も一生懸命、頑張るだけさ」。目が覚めるようなスーパーショットは、ほんの号砲に過ぎない。【酒井俊作】

 ▼新外国人ゴメスが78打席目の初本塁打。日本球界1年目の阪神外国人としては、01年ペレスの121打席目以来の遅さ(0本塁打の選手を除く)。ゴメス1号はチーム18試合目だったが、最強助っ人バースは来日1年目の83年に同19試合目にようやく初アーチを放っている。