<巨人5-3中日>◇18日◇東京ドーム

 巨人杉内俊哉投手(33)が今季初勝利を飾った。4度目の先発となった中日戦(東京ドーム)で7回4安打2失点の好投。低めに直球、スライダーを制球し、7回以外はイニングの先頭打者を出塁させない丁寧な投球を演じた。中日の22歳の左腕岡田とは対照的に、ベテランの妙を見せつけ、チームを3連勝に導いた。

 杉内はネガティブな思考を捨てた。7回。森野に打たれた放物線のイメージをすぐに頭の中からかき消した。次に対峙(たいじ)した和田に四球こそ与えたが、この日の最速142キロをマーク。左腕を力強く振り続けた。最後は代打ゴメスを外角スライダーで中飛に打ち取り、7回2失点で先発投手の責務を果たした。「長かったですね。勝てなくて。みなさんは分からないでしょう?」と優しく、逆に問いかけた。開幕して約1カ月かかった、14年初勝利の味をかみしめた。

 開幕した実感が湧かない日々を送った。15日の練習日。「シーズンは始まっているけど、まだスタートできていないというか。(勝ち星に)白がつくかで全然違う。自分に勝ちがつくということはチームも勝ってるわけだから」。苦しい胸の内をのぞかせたが、泥沼には、はまらなかった。「投手は繊細なもの。自分は考えすぎて、ドツボにはまる。あまり考えないようにした」と前だけを見た。

 3回までに勝負の大勢はついた。導いたのは杉内の力だ。速球は130キロ台中盤だったが、スライダーとともに低めに丹念に配球された。一回り近く年下の中日先発岡田とは対照的だった。速球やスライダーを主軸にするスタイルは似ているが、高めに浮く岡田とは違い、打者のベルトより下を突いた。岡田は3回まで毎回、先頭打者を許したが、先頭の出塁を許さない。「相手に考えさせないように」とテンポも小気味よかった。3回まで5点の援護点も、自然な流れだった。

 原監督は「今日は非常に攻めていた。スライダーに頼る杉内は弱く見えるが、今日は直球をうまく使っていた」と認めた。杉内は少しだけ後ろ向きな言葉で人間味を見せた。「開幕して勝てない時期があったので、これでシーズンに入れば大丈夫かな。また来たらショックだけど」。1勝の安堵(あんど)感に包まれていた。【広重竜太郎】