<中日3-6阪神>◇6日◇ナゴヤドーム

 圧倒的な存在感だった。相手の守護神を打って持ち込んだ延長戦。最後は猛虎の番人呉昇桓投手(31)が締めた。3点を勝ち越した延長12回。先頭大島を追い込むと、捕手のサインに首を振った。選んだのは148キロの「石直球」だった。どん詰まりの二飛。岩崎、ルナまで全12球で料理。力でねじ伏せた。

 「勝ったのでうれしいです。延長12回までいったわけだから。きょうはみんな8時間以上、グラウンドにいたわけだからね」

 これで4月11日巨人戦から9試合、9イニング連続で被安打0。つなぎ合わせれば“ノーヒットノーラン”という隠れた快挙だ。あの藤川でもストッパー定着後、連続無安打イニングは8回2/3が最長だった。それでも呉昇桓は数字に興味を示さなかった。

 「その数字に意味はなくて、今日のように投手、野手、みんなでつないだ試合で勝つことが大事だ」

 クローザーならではの哲学がある。いいことは忘れ、悪いことは記憶に刻む。

 「反省しないといけない試合はよく覚えている。打たれた内容がよくなければ反省しないといけない」

 中日大島には今季初対決となった4月3日、京セラドームで直球を三塁打されている。この日、勝負球に選んだのは、やはり「石直球」だった。守護神としての意地がのぞいた。

 先日、林昌勇が日韓通算300セーブを達成。尊敬する先輩に祝福の電話をしたという。「彼は内気だから、僕から連絡しないと、だめなんです」。藤川、林昌勇…。その存在感は偉大な先人たちをほうふつとさせるようになってきた。【鈴木忠平】