<広島3-4阪神>◇14日◇どらドラパーク米子

 父さん、ゲ、ゲ、ゲッツーの嵐だ!

 阪神岩田稔投手(30)が8回2失点と踏ん張り3連勝を飾った。6イニングで先頭打者を出しながら、3併殺やバント失敗を誘う粘りの投球で傷口を広げなかった。開幕ローテーションを外れた左腕が続ける意地の好投に、目玉のオヤジも目を見開いた!

 強い、動くストレートが粘りを呼んだ。岩田は打ち取るたび、左手でグラブをたたいた。8回のうち6度も先頭打者を出したが、そのたびに踏ん張る。8回7安打2失点で、自身初の開幕から3連勝を飾った。8回をわずか93球でしのぎ、完全にローテ投手としての地位を確立させた。

 岩田

 球場が狭かったので低め低めという意識はありました。(先頭は)しんどかったですけど。早い回に逆転してくれたし、しっかり投げるだけでした。

 試合前に前日先発した藤浪からマウンドの話を聞いた。「傾斜は感じられないけど、掘れやすいから、しっかり足場を作れば大丈夫です」。後輩の助言を胸に、意識を低めに集中させた。独特の動く直球にツーシームで、バットの芯を外す。先頭を出しても3併殺、最少失点でしのいだ。

 “祈りの儀式”で自己暗示をかける。マウンドに上がると、帽子を取って一礼。続いて胸に手をやり、目をつむる。静寂につつまれ、自分の世界に入る。時には何かをつぶやく。「自分に大丈夫と暗示をかけている感じです。何を言っているとかはないんですけど」。米子の夜風を感じながらの儀式が、岩田を落ち着かせた。

 安定した投球を続け、信頼を取り戻した。普段は辛口の中西投手コーチも「ボールを動かしていた。先頭は出したけど、球数も少なかったな。ローテ投手?

 当然」と合格点を与えた。交流戦も相性を見ながら起用していく方針だ。

 好投しても反省ばかりが口をつくのも岩田らしさだ。初回にわずか3球で先制を許し、終盤に四球で走者をためた点を猛省。「自分の首を絞めてしまった。次はムダな四球をなくしたい」。引退すら覚悟して臨む背水のシーズンだ。復活だけで終わるつもりなどない。【池本泰尚】